第65話 避難民を救え②

 広島から真っ直ぐ鳥取へと向かうこと十数分、鳥取にある避難所セーフティーを発見した。どうやら、丁度今から出発するようだ。よかった、こっちも間に合ったか。


 外壁がぼろぼろになった避難所セーフティーから出てくる人達。武器や鎧を身につけている守護者ガーディアンが数名と、避難民であろう老若男女が数十名。こちらも、広島の人達と同じくらいの人数だ。


 そして、ここは鳥取砂丘ダンジョンからワーム系の魔物が押し寄せてきているようだ。あいつらは地面を掘りながら進んでくるので探知がなければ索敵が難しい。しばらくこの集団に同行しよう。


 僕は身体の光をできるだけ抑えて、青い鳥っぽく見せて避難民のもとへと向かった。


 ▽▽▽


「あ、鳥さんだ! 青い鳥さんこっちにおいで!」


 周囲を警戒している守護者ガーディアンよりも、子どもの方が僕を見つけるのが早い。何でだろうね? 子どもって動くものに反応する能力でも持ってるのだろか?


 ただ、子どもは無邪気に喜んでくれているが大人達はそうはいかない。侵略者アグレサーがうろうろするこの場所で、鳥が飛んできたら警戒するに決まっている。


 避難民の人達は僕から離れるように動き、守護者ガーディアン達がその前に立ちはだかった。剣や槍、中には弓を持っている人もいるようだ。あっ、あの弓を持っているのは女性かな?


 ピィィィ


 フェニックスの鳴き声がどんなものかわからないけど、とりあえず普通の鳥っぽく鳴いてみた。そして、守護者ガーディアンのみなさんの前に降り立つ。向こうはこっちをじっと見つめているが、僕はあえて気にせずエサをついばむように地面をつついてみた。


「襲いかかってこないところを見ると、普通の鳥みたいだな」


 その状態が数分続いたところで、守護者ガーディアンのみなさんが武器を下ろしてくれた。基本的に侵略者アグレサーは人を見るとすぐに襲いかかってくる。逆に言うと、人を見ても興味なさそうにしていれば侵略者アグレサーだと思われないと思ったのが上手くいった。


「先に進もう」


 守護者ガーディアンの何人かが先頭へと戻り避難民達を先導する。念のためだろうか、二人ほど残り僕の方を警戒していた。


 避難民達がぞろぞろと動き出したのを確認していたら、子どもが僕の方に手を振っているのが見えたので、翼を振り返してみた。


「お母さん、鳥さんが手を振ってくれたよ!」


「えっ? そんなことあるわけないでしょ。さあ、さっさと歩いていくわよ」


 そんな親子の会話を聞きつつ、僕はまた空へと飛び立ち旋回しながらついていく。もちろん、探知で侵略者アグレサーが近づいていない確認しながらね。


(来た、大きめのワーム一匹。守護者ガーディアン達に知らせないと)


 避難民達の後をついていくこと数十分、ついに侵略者アグレサーに見つかったようだ。地面を潜って来ているのでその姿は見えない。守護者ガーディアン達も気がついていないようなので、僕はワームの真上で旋回しながら鳴き声を上げた。


「何だ? さっきの鳥か? 何であんなところでぐるぐる回ってるんだ?」


「おい、あの鳥の下を見てみろ! なんか動いているぞ!」


「ワームだ! グラウンドワームが来たぞ! 総員戦闘準備!」


 僕の動きが伝わったようで、守護者ガーディアンの人達がワームの存在に気がついた。迫り来るワームを戦闘態勢を取って迎え撃つ。


 ブシュ!


 まずは先制攻撃とばかりに弓使いが矢を放った。その矢は盛り上がっていた地面に刺さり、ワームまで届いたようだった。


「ギョォォォォ!」


 気持ちの悪い鳴き声を上げながらワームが地面から飛び出した。直径一メートル、体長は五メートルほどはありそうだ。身体の先端は大きな丸い口となっていて、鋭い刃がぎっしり生えている。


(こいつに目はなさそうだから魅了スキルは効かなさそうだな。さて、どうやって援護しようかな)


 当然だけど、避難民や守護者ガーディアンのみなさんに犠牲を出すわけにはいかない。ただ、守護者ガーディアン達がワームを倒せばレベルが上がるかもしれないからね。そうすれば、もっと護衛しやすくなると思うんだ。決して、まるやルナを見て僕も人間達にチヤホヤされたくなったわけじゃないよ?


 とりあえず、いつでもサポートに入れるように低空飛行で旋回しながら、様子を見ることにした。 


「あの鳥のおかげで助かったな! 幸運の青い鳥ってか?」


 剣を構えたこの中でもリーダーっぽい男性が叫ぶ。うんうん、そう思ってくれるとありがたい。


「もう一発いきます! その後はお任せします!」


 弓を持った女性の凜とした声が響く。その言葉通り、弓使いの女性はもう一度矢を放ち、ワームの胴体へと突き刺さった。


「ギョォォォォ!」


 今度は最初の矢より深く刺さったようで、緑色の体液をまき散らしながらワームが距離を詰めてきた。ダメージはあるが勢いを止めるまでには至らなかったようだ。


「十分だ、お前さんは下がってろ! みんないくぞ!」


「「「おう!」」」


 弓使いの女性はいったん下がり、リーダーのかけ声とともに剣と槍を持つ男性守護者ガーディアン達がワームへと向かっていった。その様子を固唾をのんで見守る避難民達。


 彼らが倒されれば次は自分達の番だ。武装もしていない避難民達は為す術もなくやられてしまうだろう。それがわかっているから、人々は祈るような目で守護者ガーディアン達の勝利を願っている。


 最初の攻撃でダメージを負っているとはいえ、四人の守護者ガーディアンに対して、ワームの方が優位に戦闘を進めている。やはり、守護者ガーディアンのレベルが低いようだ。


 守護者ガーディアン達の剣や槍はワームの身体の表面に傷をつけているが、明らかに致命傷にはほど遠い。逆に暴れ回るワームに弾き飛ばされ、一人、また一人とケガを負っていく。


(このままじゃ、やられてしまいそうだ。そろそろ僕の出番だね)


 その様子を見ていた僕は、最後の一人が弾き飛ばされたタイミングでワームの頭目がけて急降下した。


 ザシュ!


 すれ違いざまに、爪でワームの頭部分を切り裂いてやった。たったそれだけで、ワームの頭部が半分千切れかかってしまった。


「ギョォォォ……」


 力なく鳴いて地面に倒れるグラウンドワームさん。


「な、何なんだいったい!?」


「と、鳥だ。青い鳥がワームを!?」


「おい、チャンスだ! トドメを刺すぞ!」


「お、おう」


 ワームの弾き飛ばされ地面に倒れていた守護者ガーディアンが立ち上がり、ワームに剣や槍を突き立てトドメを刺していく。その様子を見ていた避難民達から歓声が上がる。


「やった! レベルが上がったぞ!」

「俺もだ! これでまだ戦える!」


 守護者ガーディアンの方々も無事レベルが上がったようで、元気を取り戻している。後はその傷を治してあげるとしよう。


 もう、僕のことをすっかり警戒しなくなったようで、目の前にとまっても武器を構えるどころか今にも抱きしめてきそうなくらいの笑顔でこっちを見ている。


「ピィィィィィ!」


 僕は自分の鳴き声に合わせて治癒魔法をかけてあげた。守護者ガーディアン達が光に包まれケガが治っていく。


「おお、おお!? ケガが治っていくぞ!?」

「こ、これはこの青い鳥がやっているのか!?」

「神だ、神が使わしてくれた幸運の青い鳥だ!」


 守護者ガーディアンの傷を治したことで、ますます僕は信頼を得ることができた。これでこの人達に襲われることはないだろう。それどころか、避難民の人達はご高齢の方を中心に僕に手を合わせて感謝してくれているようだ。


(まったく、まるの奴め。こんなにいい気分を独り占めしていたとは……けしからん!)


 僕は久しぶりに人々と触れ合うことができて、充実した気分を味わうのであった。

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蟻から始まる現代ライフ~異世界から侵略された地球を守っているのは人間だけではありません~ ももぱぱ @momo-papa

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