俺様の名前は西京宙空。珍しい名前やと思うけど、俺様はこの名前が気に入っている。探索者にふさわしい名前だからな!
俺様は国士無双というパーティーの一員をやってる。自分で言うのも何だが、日本でNo.1のパーティーや。
さて、その俺様達は最近腕のいいカメラマンと知り合った。いや、腕がいいなんていうレベルやない。ありゃ天才や。正体を隠しているらしく、名前はSSと名乗っていた。
初めてあいつが撮影した動画を見たときは、腰を抜かすかと思ったわ。それほど、衝撃的やった。探索者の顔はどアップで映るわ、ファイアーボールと並走するわ、魔物側から撮影するわ、移動中の会話まで拾うわ、何から何までレンタルドローンとは一線を画す技術やった。
ちなみに撮影されていたのは百花繚乱という女子四人パーティーやった。Dランクやから、実力はまあまあやったけどみんな顔はよかったわ。俺様の好みは……いや、余計なことは言わんとこ。
俺様はすぐにリーダーの凱亜に進言したね。次はこいつに撮ってもらおうと。こいつに俺様の勇姿を撮らせたら、ファンが増えるに間違いないと思ったからな。
他のメンバーもこれについては賛成してくれた。なにせ、今まで味気なかった探索動画が一流の映画みたいになっとったからな。Dランクパーティーであの再生回数なら、日本No.1パーティーの俺様達ならどれだけ稼げることやら。まあ、金には困ってへんから収益はどうでもいいけどな。
そんで、凱亜が連絡を取ったらあっさり撮影をオッケーしてくれたわ。専属にならんかと誘ってみたけど、それは断られちまったがな。まあ、頼めばまた撮影してくれそうやったから、無理にとは言わんかったが。
それで実際に撮影してもらったんだが、これがまた期待以上やった。撮影技術はさることながら、視聴者目線で細かいところも丁寧に拾うセンスがありおった。編集の腕も超一流で、みんなであの動画を見たときは鳥肌が立っちまったよ。
それに、あいつが念のためにとドローンの腹にポーションをつけていてくれたおかげで静香が死なずにすんだんやからな。マジ感謝しとるわ。
そんでその動画やけど案の定、配信と同時に爆発的に再生回数が伸びていきよった。いや、案の定どころやないな。想定以上のとんでもない勢いやった。それに合わせて、俺様のファンクラブの会員数も激増したんよ! まじ感謝!
んで、この間ダンジョン庁からこのSSの転移石の登録を手伝ってほしいと依頼がきた。何のことかと思ったんやけど、このSSのドローンは探索者が手に持っていると、持ち物扱いになって一緒に転移石で飛べるらしいねん。そんで、自分でも転移石に登録ができおるんで、ボスを倒さずに登録が可能っちゅうはなしやった。そんなんありなのか?
まあ、できるんだからしゃーないとして、俺様達はこの依頼を受けることにした。このSSってやつはとんでもない可能性を秘めているからな。仲良くしておいて損はないっちゅう判断や。
ほんで、四人で四カ所のダンジョンで待ってることになったから、俺様はピンと来て最後に回ってくる犬吠埼タワーダンジョンにしてもらったわ。特に反対もされなかったから、俺様のところが最後になった。しめしめ、これで上手くいけば俺様の人気はさらに倍増するぞ!
当日、犬吠埼タワーダンジョンで待ってたら、えらいたくさんの探索者に声をかけられたわ。まあ、それが目当てでちょっと早めに着くようにしたからな。握手やらサインやら写真やらを求められて、いやぁ大変やった!
そんで転移石の登録自体はすぐに終わると思ったから、ここで俺様はSSに一つ提案をしてみた。一時間くらい俺様を撮影してみないかと。
一瞬迷った気配を感じたけど、SSは俺様の提案に乗ってきたぜ! そうこなくっちゃ!
「さて、バッチリ映ってるか?」
そう問いかけると、返事が返ってくる。よーく考えたら、ダンジョンの中と外で会話できるって反則やわ。今までは外の天気すらわからんかったからな。
しかし、さすがのSSとはいえ前回は俺様の動きについて来れていなかったからな。少し反応はよくなっているようだが、はたしてどのくらいついてこれるか。俺様は七割くらいの力で動いてみた。
(ほーん、このスピードはついてこれるんや。成長しおったな!)
まあ、本気で動いたらついてこれへんっぽいから、この辺りで押さえておくか。俺様の勇姿が映らなかったら意味ないからな。
ほんでたっぷり一時間、武器創造もスキルも出し惜しみなしで披露してやったわ。これで俺様の人気もさらに上がること間違いないしや!
「今日は楽しかったで! そんじゃ、今回とった動画は俺様の個人オンラインストレージに送っといてくれ!」
なんや、別れる時にものすごくうまいサンドイッチまでもらってもうた。やっぱりこのSSってのは出来る男やな。ん? 男だよな?
さて、今回の動画はメンバーには内緒で撮影してもらったからな。あいつらに言ったら、SSにそんなことさせるなって怒られそうだからや。せやから、配信も内緒でやらんとな。そや、ファンクラブのホームページの載せてもらうか。
そんなことを考えながら、俺様は自慢のスポーツカーでメンバーの元へと帰った。
▽▽▽
「お疲れ様。宙空の方はどうだった?」
俺様がパーティーハウスに戻ったときには、当たり前やが全員揃っていた。
「なーんも問題なかったで」
凱亜の質問に右手を挙げて答える。個人的に動画を撮ってもらったことは内緒にして。
「それにしても、SSさんのドローンはすごいよね。持っていればモノ扱いなのに、自身でも転移石の登録はできるし、いつの間にか通話できるようになってるし、そしてあの収納……この先もっと色々な事ができるようになりそうだよね。そう考えると仲良くしておいた方がよさそうだ」
凱亜の言葉に俺様達は一斉に頷く。おそらく、今回使っていた二台目のドローンは魔力でできてるな。俺様達の武器創造に似ているんや。スキルで生み出したドローンということで、俺様達の意見は一致してる。
それやから、あのドローンは成長している。いや、正確にはレベルアップしとるんや。それはつまり、SS自身がレベルアップしているということや。陰でダンジョンに潜っているのか、ひょっとしたら、ダンジョンに潜らずにレベルアップしとるかもしれん。
まあ、そこを詮索するつもりはないが、とにかくあいつと仲良くしておいてそんはないっちゅうことや。
「その意見には俺様も賛成だ。あいつに撮ってもらうと人気がでるからな!」
俺様の一言になぜか白い目を向けてくる三人。くそ、俺様の人気がそんなに羨ましいのか。
「私も賛成ですわ。あの方とはこの後も長くお付き合いすべきですわ」
人への評価は厳しい静香が珍しく褒めてる。ああ、そうか。あいつはああ見えて食いしん坊やからな。あのサンドイッチが気に入ったのかもしれんな。
「静香はあのサンドイッチが気に入ったんじゃないのか?」
俺様の何気ない一言が波乱を巻き起こしてしもうた。
「そうそう、あのサンドイッチは最高だったね! めちゃくちゃおしかったもんね!」
凱亜は俺様の会話に乗ってくれたのだが……
「俺はもらってないぞ」
なぜか龍牙がサンドイッチを貰ってないと言い出しおった。なんやおかしいな? SSは全員にあげていると言っていたはずやが。
「わ、私も貰っていませんよ」
すると静香も貰ってないと言い出しよった。あのSSはとてもじゃないが嘘を言うようには見えんかった。かといって、龍牙や静香が嘘を言っているとも思えへんが……
「えーと、龍牙の方は収納のない朝陽で行ってるはずだから、その場でサンドイッチは渡せないよね。だから、誰かに預けていると思うんだけど……」
凱亜の説明に俺様と凱亜と龍牙が顔を見合わせて……そっと静香の方に目をやった。
「ご、ごめんなさい。あまりにおいしかったのでつい……」
何と、食いしん坊の静香が二人分食べとった。珍しく顔を真っ赤にして謝る静香の姿を見れて、俺様は楽しかったわ! 凱亜もなんや嬉しそうにしておったし。龍牙だけはムスッとしてたけどな!
そして、一週間後、個人的な動画配信がバレて今度は俺様がしこたま怒られることになるとは、この時は想像すらしていなかったわ。