まだ、届かない
ぎゅむっ、ぎゅむっ。
前を歩くあの人のあとを追いかけて、僕もこの白い道に足跡をつけていく。
きゅむっ、きゅむっ。
あの人に比べたら、軽い僕は鳴らす足音も小さい。
隣に並ぶ、大きな足跡。まだまだ全然届かない。
悔しくなって、思い切り蹴り上げた。
陽の光を反射してキラキラ光る、白い結晶。その向こうで、驚いた顔であの人が振り返る。まるで夜空のように鮮やかな、黒い髪をなびかせて。
どうしたの?――小首をかしげるあの人に、なんでもないやい!って意地張った。
文学フリマ京都9の無配 凪野海里 @nagiumi
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