守るための孤独、寄り添うための愛
- ★★★ Excellent!!!
愛しているのに触れることができず、理解したいのに思いが届かない――『背中合わせの恋人たちへ』は、そんな繊細で微妙な距離感を丁寧に描き出した物語です。
義弥の心に潜む〈狼〉は、彼を守ると同時に孤独へと閉じ込める存在。幼少期からの深い心の傷が具現化した彼の分身であり、心の奥底で救いを求める象徴でもあります。
そして、過去の傷と向き合うことは、時に大きな苦しみを伴います。完全に孤独が消えることはないかもしれません。それでも、共に寄り添う存在があることは、未来を生き抜く力となり得るのです。
静かに灯り続ける心の再生の光――この物語は、愛する人に「寄り添う」ということの本当の意味と、その尊さをそっと優しく教えてくれる作品です。