心の闇に寄り添う医師カイラス——救いと依存、そのはざまで

 この物語を読み進めていると、「生きること」と「壊れること」の狭間で揺れる魂の叫びが胸の奥にじんわり染みていきます。精神科医としての経験を持つ主人公シンイチ――転生後のカイラスが直面するのは、ダークな闘技場と美しさゆえの脆さ。誰かを救いたいと願いながらも、誰かを救うことが必ずしも“正義”とは限らないという現実が、物語に独特の奥行きを与えています。

 登場人物それぞれの「心の傷」や「依存」が巧みに描かれており、医療のまなざしで人間の闇に寄り添うカイラスの姿が、ときに読者自身の心にも優しく光を灯してくれます。女神カルミナの歪んだ愛情と、リセラの孤独――それぞれの痛みが絡み合いながら、不器用に心を通わせていく様子は、読むほどに切なく、目が離せません。

 “救い”とは何か、本当の強さとは何か。過酷な世界を舞台に、人生の意味を問いかけてくれる、心揺さぶるダークファンタジーです。

 新たな“救い”の物語に、ぜひあなたも触れてみてください。

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