磁石のような人間関係

森本ヴィオラ

【エッセイ】磁石のような人間関係

 磁石のように吸い寄せられる人たちっている。20代の私がN極だとしたら、S極の人は、良く言えば面倒見のいい人、悪く言えばおせっかいな人だった。

 私には自分がなかったから、なんでも決めてくれる人がいると助かる。何学部を志望するか、どのゼミに入るか、大学卒業後はどんな進路を選択するか、キャリアチェンジするか……恥ずかしながら、これらすべて、S極の人にアドバイスを求めて決めたのである。(なお後悔はしていない。)

 しかし、S極の人にもメリットがあったはずだ。それは、自分のアドバイスによってN極が思い通りに動く、という快感だ。ときには、アドバイスを超えて説得までする。または、相手が助言通りに動かないと不機嫌になる。これは、世話焼きという名の支配・コントロールである。

 S極が活力を得るためには、N極が必要で、N極を手離さないための努力までする。褒めたり、物を与えたり、食事をおごったりする。そうされると、N極は「自分が必要とされている」ことに心から感動し、「いつまでもS極についていく!」と決意するのである。よって両者の癒着はどんどん強固になる。

 ここから抜け出すには、N極がS極から離れるしかない。30歳手前で、私はS極との関係を絶った。(S極は複数人いたので、私は少しずつ人間関係の整理をしていった。)

 コントロールからようやく自由になることができた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

磁石のような人間関係 森本ヴィオラ @morimoto_viola

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ