【SF粒子百合短編小説】「量子の花言葉 -Quantum Florescence-」（9,594字）

「私たち、出会ったら消えてしまわなければいけないの？」

　真空の海で光子から生まれた二つの存在——
　電子の少女イオンと陽電子の少女ポジティア。
　本来なら出会った瞬間に対消滅するはずの二人は、奇跡的な均衡によって共に在ることを許された。
　しかし、それは永遠には続かない。
　引き合えば引き合うほど、消滅の時は近づいていく。

「でも、私はあなたと一緒にいたい」
「私も同じ。たとえ、それが終わりだとしても」

　量子物理学の法則と詩情が織りなす、かつてない愛の物語が始まる。

　存在と消滅。
　永遠と刹那。

　そして、二つの魂が見出す、驚くべき真実とは——？