本作は、作者様も仰っているとおり、残酷な戦争や生死のやり取りを描いており、読み手にも少なからず、気構えは必要になるかもしれない一作となります。
ただし、決して生々しいだけの描写に終始せず、どこか幻想的で美しい文学的な気品を備えているため、物語として整理されてあります。
テーマとしては、「忘却」と「記憶」を巡る切ないドラマ、になると感じました。
失うことへの恐怖や、それでもなお大切な思い出を胸に刻んで進もうとする登場人物たちの内面が、丁寧な心理描写によってエモーショナルに描かれています。
タイトルにもある「銀色の結晶」という作者様のセンスは、作品の根幹を支えており、独自性の高い戦記世界とプロットの「美しさ」を構成しています。
すでに、サブタイトルで「さよならを忘れるための、戦記」と示されているとおり、最初から最後まで切なさと儚さに溢れており、物語のクライマックスに向けて、胸が締め付けられることは必至だと思います。
過酷な戦場を舞台に、大切な人との別れの悲しみと記憶を抱えながらも戦い抜く者たちの宿命を、透明感溢れる美しい筆致で描き出した、切なくも壮大なダークファンタジー戦記。
既に完結されているため、一気読みの上、その余韻を楽しみたい、そのような作品が好みという方、是非お読みいただければと思います。
【レビューコンテスト応募】