第6話
それからだろうか、私が何となく学校から距離を置くようになったのは。陰口をたたかれている現場を見てしまった当日は、恵理の後を追うようにして、そのまま教室に何食わぬ顔で戻っていったのだが、次の日はどうにも気分が乗らなくて、朝になっても布団から出ることができなかった。また悪口を言われたらどうしようとか、もっとひどいことをされたらどうしようとか思って、怖くなったわけではない。ただ、クラスメイトからあんなに嫌がられてまで、そして、自分も嫌な気分になってまで、わざわざあんな面倒な場所まで行く理由がわからなくなってしまったのだ。それでも、そんなしょうもないことのために成績を落としたり、周りからあれこれ言われたりするのは癪だったので、週の半分、特に苦手な数学のある日は、なるべく教室に顔を出すようにしていた。
一方、恵理の方はというと、向こうは向こうで、先生やクラスメイトが噂しているように、外にお出かけする用事が多いのか、学校で見かけない日も多く、いたとしてもよりによって私の陰口を言っていたグループと仲睦まじげにつるんでいるし、こちらの方をちらりとも見ようとしない。それでも放課後や休日になると、「おはよ~、元気?」だの「今日の授業だるかったね」などと無難な内容のLINEが送られてきたりするので、私のことを気にしているというのも全くの嘘ではないのだろう。ただ単に、クラスの友達には仲良くしているのを知られたくないから、学校では話さないというだけで。露骨だけど、別にそれほど嫌な気はしなかった。こちらは元々、相手には大して興味がなかったのだ。
(仮題)苦手なあの子 紫野晶子 @shoko531
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