第8話 いつものふたり
「ともだち……はは、まあそうだよな。
うん、まあそれでいいや。
……今は。では、改めてよろしく頼む」
彼が私に向けた苦笑いは、どこか寂しく、それでいてどこか慈愛に満ちている。
「あ、そうだ!あんた作家なんだからさ、何か書いてみたら思い出すんじゃない?
例えば……TLとかどうよ。
新人ナースがイケメンスーパー外科医と、超絶技巧イケメンレントゲン技師と、お忍び入院のイケメンアイドルに愛される逆ハーものとか。わっ、これ凄くいいネタじゃない。
私ってば天才!?」
「ぎ、逆ハーだと?!
逆ハーはこの世で最もあり得ないジャンルだ!大体、高IQ団体の記念パーティでもあるまいに、何で
しかもモデル集団かと思えるほどのイケメン率。
ありえない、例の少年探偵の事件遭遇率ぐらいありえない!」
「ぐっ、それを言うならハーレム物だって同じじゃない!あれの美少女率半端ないから。モデルまみれかっつーの。
あと、女子側が積極的すぎ!
黙って厨二台詞吐いてりゃ向こうから美少女が寄ってくる世界線なんてこの世には存在しない!
そもそも、男どんだけ怠惰なの?口開けて待ってりゃ雌が寄ってくるなんて甘い考えを捨てろ!
鳥や昆虫たちの
告白して振られて恥を掻け!
それをバネに、己を磨け!」
「「何を〜〜〜」」
俄かに互いの交わす視線の間に、青い火花が飛び散った。
「男は繊細なんだよっ」
「女だって繊細じゃわいっ」
だだっ広い夜の病院の屋上に、賑やかな二人の声が響く。
そんな二人の騒がしさに、たまたま下界を覗いた月の女神セレーネが、にっこりと微笑み、愛の祝福を与えた……
かも知れない。
《了》
新米ナースと毒舌患者 佳乃こはる @watazakiaya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます