第3話 (産)婦人科


 職場の同僚で少し年上のお姉さんが「急な生理不順で困っている」と、わたしに相談をしてきたので、堂々と「わたしも生理不順で困ったことがあって、今は薬を服用してし凌いでいる」と返事をしたことが始まりだった。


 ◇


 年齢を重ねたのか、仕事から来たストレスなのか、原因は定かではないが生理が月2回起きるようになった。


 始めのうちは様子を見ようと思って、生理周期や出血の状況などを観察してわかったことは、 月2回でそれぞれの出血量が半分になった結果、月1回分の出血量というわけでもなさそうで、月2回の頻度は変わることもなく出血量はある意味いつも通りの1回分だった。


 数か月が経つと、めまいと手足の先に冷えを感じるようになった。


 調べてみると、生理1回の出血量が20mLから140mLが正常とされているらしい。全体の平均値として80mLとしておこう。

 あくまで平均的な量の話になってしまうが、月1回であれば1か月に80mLで済むところ、月2回なので1か月に160mLを出血していることになる。


 目安として、200mL献血の間隔は4週間。

 健康な方であれば、1か月に200mLの出血は支障がないってことだから、支障が出てるわたしは、200mLよりも多めに出血している可能性が高い。


 作る量よりも出る量が多けりゃ、徐々にめまいや冷えを感じるようになるわ。

 当然だわ。


 さすがに不安を覚えて、娘の出産でお世話になった産婦人科を訪ねてみた。

 残念なことに「子どもを望んでいないなら生理不順でも困らないでしょ」と一掃され、漢方薬すら処方してもらえなかった。


 働く女性のこと、なんにもわかってねえな、おい。

 誰にも聞かれず、本人に届くこともないところで悪態をつき、次の(産)婦人科に気持ちを切り替える。

 この産婦人科は、出産で入院する際の食事が豪華で美味しいと地元では有名な病院だった。

 この点ではお世話になることはなさそうなので、とても残念だ。

 繰り返しになるが、食事は美味しいに越したことはない、お世話になることがなく非常に残念だ。


 さて、こちらの(産)婦人科では、わたしからお願いすることも無く、ホルモンバランスを見るために血液検査とか子宮内膜症などの大病をしっかりと確認してもらえて、大病の傾向はみられないということで、ひとまずは漢方薬(当帰芍薬散)の処方をいただいた。お試しに、という感覚で。

 

 しかし残念ながら、何か月か漢方薬で様子をみていたものの、月2回の出血に変化が起きることはなく、その度に起きる腹痛や頭痛、冷えに悩まされ、生理が煩わしいと感じるほどだった。


 その煩わしい思いを医師に伝えると、「煩わしいと思うのであれば」と低用量ピルを処方してくれた。

 診察の度に医師は、低用量ピルの副作用である血栓症の恐れを説明してくれ、年半年に1度ほどの血液検査を続けること1年半。


 わたしは40歳の誕生日を迎え、いつものように薬(低用量ピル)を処方してもらおうと(産)婦人科の診察室を訪ねた。


「40歳になったからね、別のお薬にしてみるのは、どう?」


 低用量ピルは、薬を服用しない期間を作ることで生理を起こすため、タイミングが規則的ではあるが、血栓症のリスクが上がること。

 変更する薬(ジエノゲスト)は、血栓症のリスクが減るものの、生理の発生するタイミングが読めない。


 どんなに体調を崩しても、わたしが働いて稼ぎをもらって、家庭を守って自分の居場所を確保しなければっ! なので、医師から刷り込まれてきた血栓症のリクスを考えると、急に死ぬわけにはいかないのである。

 頭の中でこんな理想的なことを考えられたらよいのだけど、正直いつ来るかわからない生理への不安でいっぱい。

 皮膚科での新薬や義理母の新薬へのチャレンジ、それらが案外に効果をもたらしている。わたしの過去のそういった経験が、薬を『試してみる』ことに対して、後ろ向きにならないことを選ばせる。


「わかりました。変えてみます」

 わたしの返事に医師は一層明るい声で話し出す。


「そうしましょうね。40歳になったのだからね」


 ◇


「んんっ? 40歳をずいぶんと押し出してくるなあ。40歳に何かあんのか?(笑)無駄にコノヤローと思ったよ」

 と、年上のお姉さんに言いつつ、わたしと同じ(産)婦人科の受診を勧める。


 年上のお姉さんは、さっそく予約して受診し大病ではなかったとのことで、誠に良かった。わたしとは違って「40歳超えている」ことを押し出しもせず、薬を処方してくれたようだ。


 (産)婦人科の先生よ、そこは40歳を強調するところだと思うぞ。

 と、心の中で毒を吐きつつ、年上のお姉さんに「大病ではなくて良かったですね」と一声添えた。



 1日2回服用する新しい薬は何度か飲み忘れたこともあるけど、順調である。

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2026年1月11日 20:00
2026年1月11日 20:00

診察室の先生とわたし 霜月れお @reoshimotsuki

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