第15話 驚かずにはいられない
明日になったらどうせ会える。
弥生さんがそう言った明日が来たわけだが、どういうことなのだろう。
彼に会える?そんな急に?
「ナル?またボーっとしてるの?」
「え?ああごめん、ちょっと考え事しちゃってた......」
ソラが俺のことを心配そうに見ている。
どうせ分かるのなら考えすぎるのはよくないかもしれない。
「あんま考え事してっと人にぶつかるぞ~」
一緒に登校していた雨がそう言う。
まあ人にぶつかりそうなのは危ないか......
そう俺が思った瞬間
「おわっ⁈」
人にぶつかってしまいました。
誰だよぶつかると危ないからって言ったやつ。俺だよちゃんとしろよ!しかもなんで俺はじにいたんだろう。あっ、俺がボーっとしてしまっていたからか。
ていうか、おわってなんだよ。ぶつかった方だぞ、驚くなっての。
「すまねえ、大丈夫か」
「俺の方こそごめんなさ、い?は?え?」
頭を下げて、上げた時にぶつかってしまった人の顔を見た。
噓だろと思わず言ってしまいそうになった。
だってまさか、本当に?そんなことが頭の中をめぐる。
銀色の髪をゴムで結んでいて赤い瞳で眼鏡をかけている男の人。
まるで、俺がずっと探していた、ずっと会いたかった彼の姿だ。
「な、んで?」
「もしかして......」
「ごめん二人先行ってて。いや、雨だけいてもいいかな」
俺はきっと長い話をしないといけないのではないかと思って二人にそう言った。
ソラは困惑しているようだが雨は事情を察したと同時に伝えてきた。
「ソラ一人にすんのもナルは嫌だろうから一緒に行くけどよ、弥生が朝すぐに風紀委員会室来いって言ってたから行った方がいいぜ~オレもすぐ行くからな~んじゃまたな
雨がそう言ってからソラと一緒に校舎へと向かっていった。
赤木、その苗字は俺がずっと探していた彼のものだ。
今の彼がどうなのかは分からない。それに記憶があるのかも定かではない。
けれど、あの反応は間違いないだろう。
「えーと、とりあえずさ歩きながら話そうか?俺もいかないといけないところあるみたいだから」
「はい!あなたがそうおっしゃるなら!」
あ、これ確定したやつだ。
もう確認するまでもないな?
いや一応確認はするけれど俺に対してのこの反応は彼以外あり得ない。
「あの、変なこと聞くようだけど前世?みたいなのの記憶ってある?」
初対面でこれを聞いて違うと言われたら俺は今日から変なやつと思われる確率が高い。
だが、直球で聞いても平気だと思ったのだ。
「前世、ですか。俺には友人がいました。あの方は友人といって俺をそばに置いてくれてきた。ですが俺にとってあの方は友人ではなく尊敬できる人なんです。誰かを助けることに躊躇いもなく全力な人。そんなあの方のことを俺は守りたかった」
守りたかった。そう言っている彼の顔は切ない。
そんな顔をさせたいわけではないのに。
「俺も大事な友人がいたんだ。俺のことを大事に思ってくれてさ、自分のこと二の次で俺に尽くそうとしてきてた。でも、俺は対等でありたかったんだよね。だから俺は友人だと言い続けたんだよ。その友人の名前、
「もちろん知ってますよ。それは前の俺の名ですから。あなたは
予想は的中。そして彼も気がついていたようだ。
「そうだよ、久しぶりだね赤木くん。あ、今の名前は違うのかな?俺は久保成海だよ」
「俺は
「うん、よろしくね。さてと、自己紹介とか終わったところでついてきてほしいとこがあるんだよねえ。多分一緒に来いって言われるからもう行ってしまおうかと思ってさ」
「あなたが行くところならどこへでも!」
久しぶりに会ったけれど変わらないな。
変わらない。最後に見たのが彼の泣き顔だったが、また笑っているのを見ることができて良かった。
また、友人になれそうで良かった。
弥生さんがこれを全て分かっていたのだとしたら、驚かずにはいられないなあ。
ただの相談役ポジなんだが攻略対象の男たちに知らない間に惚れられてました 紫雲 橙 @HLnAu
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