屠龍(2/2)
「こら漣!何度言ったら分かるんだ!いい加減覚えろ!」
「はぁい」
渋々クワで水田を耕す。
「........今日はこれで終わり!」
「ふいいい、終わった〜」
みんなクワを投げ出し、木陰に走る。
「おい!あれ見ろよ」
友人の1人が空を飛ぶ飛行機を指差した。
「かっこいいなぁ」
双発の大型プロペラ機が青空の中を飛んでいる。
「なあ漣、お前、あれに乗ってみたいと思うか?」
地面の草をいじっていた漣が答えた。
「いやぁ、僕はいいよ」
素っ気なく答える。
「ちぇ、つまんねえの」
「帰るぞ!」
「さぁ、夕食だ」
皆が食堂に集まり、夕食を食べ始めた。
「なぁ知ってるかお前、あそこの席の漣って奴はな、爺さんが戦闘機乗りだったんだ、だけどな、あの戦いが終わった後に廃棄されるはずの愛機を強奪したんだ」
コソコソ話す。
「ふーん、その戦闘機は今どこに?」
「それが俺も知らねぇんだ」
夕食はとっくに食べ終わり、みんな部屋に戻っていった。
「消灯!」
布団に潜り、皆が寝静まったあと、施設の職員はいつもより騒がしかった。
「その報告は本当ですか?」
「ええ、ついさっき守衛室との連絡が途絶えた、あそこからここまで距離はだいぶあるので今すぐに侵入者が来るわけではありませんが、最短でも10分あれば到着するので、警戒しておいた方がいいかと」
「よし、朝まで巡回などを強化しよう」
職員はライトを持ち、施設内と外を巡回し始めた。
「ふぅ、あと少しで夜が明けるな、どうだ?何事もないな?」
「はい、侵入者も不審物も確認はできませんでした」
しかし安堵の時間はそこで終わった。
地面を揺らしながら轟音が鳴ったと思ったら壁が爆ぜた。
「.........!?」
「ふはは、御用参った!」
いきなりの闖入者は、爆破された穴から突入した。
「漣君はどこに.........?」
廊下を走りつつ、部屋を片っ端から見ていった。
「ここか?違う」
更に奥に入り、漣のいる部屋へと近づいていく。
「ここ...いた!漣くん!」
「あなたは誰!?」
爆発音と闖入者により漣の頭は混乱していた。
「話は空に飛んでからだ!行くぞ!」
漣の手を引いて、正面から外に飛び出す。
オレンジの朝日を浴びた正面玄関を後に、出口まで走る。
「さあ、このまま飛行場に行くぞ」
「でも飛行機は?このまま行っても国防軍の検問があるでしょ?」
「それなら心配ない、機体はあるし滑走路もある」
「.........」
外に停めてあった車に乗り、飛行機の場所へと飛ばした。
「何に乗るの?」
「君のお父さんの乗っていた機体だよ」
「その、聞きそびれちゃったけど、あなたは父とどこで?」
「貫徹郎さんとは同じ機体に乗っていました、彼が操縦手で私が後部機銃だった」
「その、なぜ私を?父とは血の繋がりもないのに」
しばし沈黙した。
「あなたの... あなたの父に頼まれたからです」
口を曇らせつつ話した。
「あなたの名前は?」
「高橋と申します」
「.........」
それ以降、車内は沈黙し機体のある場所まで走る。
「これがその機体です」
「これは、昔に見た機体.........?」
「ええ、貫徹郎さんが隠した機体です」
「何故ここに?」
「数日前に私があなたの家の蔵から持ち出して、密かに組み立てました」
その時、高橋の腕に花が咲いた。
正確には大口径の弾が腕に命中し弾けたものだった。
「!?」
重い発砲音が遅れて耳に届いた。
「逃げるぞ!」
片腕を無くし、激痛に耐えながら操縦席へと座る。
「後部に乗れ!機銃はそのまま撃てる、狙わなくていいから撃ってくれ!」
飛行機は滑走し始め、もどかしい速度で走る。
「上がるぞ、掴まれ!」
機体を強引に上げ、空に向かい飛んだ。
「ち、仕留め損なった、しかしあいつは長くないだろう」
黒々としたライフルを持ち上げ去った。
「次の国まですぐだから、そこまで我慢してくれよ」
息も絶え絶えだが、操縦桿はしっかりと握り、大空を飛んだ。
銀翼の旅路 ESMA @ESMA1456K
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