屠龍(1/2)
1945年の、終戦から一週間。
村の空は、かつて敵と味方が争った空とは思えぬほど静まり返っていた。
男は、戦後の闇に紛れてトラックを走らせていた。
荷台には、分解された愛機の尾翼、主翼、燃料管、計器盤が並べられていた。
「誰にも、触れさせん.........お前だけは、俺の手で守る」
古びた蔵の扉を静かに開け、次々と部品を運び込んだ。
電灯の明かりが蔵を照らす。
やがて、壁の奥にススキと板で隠された空間が生まれた。
その奥に、静かに眠る屠龍の心臓である、ハ20乙エンジンが黒く輝いていた。
「飛ばすつもりはない、だが.........ここにいてくれ、ずっとここに」
彼の手が、エンジンカウルにそっと触れた。
数週間後
「開けろ!ここにいるのは分かっている」
トラック2台分の兵士と、3人の将校が玄関前にいた。
「チッ.........ここにも来たんかいな」
家の主人は寝室から半地下に移った。
「本当は眠らせたままにしたかったが、屠龍起きてくれ、もう一度力を貸してくれ」
布に包まれた九八式旋回機関銃を取り出し、荒縄で体と銃をくくり付け腰に持った。
「.........犯人からの反応はありません、突入させますか?」
「ふぅ.....全員突撃!」
兵士たちが、ボルトアクションライフルに銃剣を取り付けた。
「突撃!」
ドアを蹴り開けなだれ込む。
「ここまでご苦労!無駄足であったな!」
突然奥から飛び出してきた男が発砲し、廊下にいた兵士たちは機関銃により一斉に切り裂かれた。
「いたぞ!」
男はまた走り出した。
「あの野郎!さっさと始末しろ!」
残りの兵士が追撃するも、狭い廊下で機関銃の連射を受けて無力化される。
「こっちだ馬鹿野郎!」
男は敵兵士を煽りつつ、外に逃げようとする。
「がっ!?」
外に出た男の腹が突然撃たれた。
「ぐうううう!!!」
猛烈な痛さを堪え、例の蔵まで走る。
「逃げたぞ!追え!」
「ぐぅ.........」
蔵の頑丈な鍵を開けて中に機銃を隠す。
「貴様!追い詰めたぞ!」
「ふはは!天晴れである!ご苦労!無駄足でなによりだ!」
「飛行機強奪犯の犯人、漣貫徹郎、貴様を逮捕する!」
「嫌だね!此の身、皇国に捧げたかったが致し方なし、我が生涯に一片の悔いなし!!」
腰から拳銃を抜き取り、将校に向けて3連射。
3人の肩、胸、頭にそれぞれ当たった。
「撃てぇ!撃て!」
兵士達一斉に撃ち、貫徹郎を蜂の巣にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます