花火を一緒に見られたら
- ★★★ Excellent!!!
「ちょっと気になる、っていうだけで、別に好きとかじゃ……」
過疎化する村で、ぼんやりと「都会に出たい」と考えて過ごしていためぐみ。
ある日彼女は幼なじみの裕史と花火を見に行く約束をしていたが、事故で命を落とす。
時が経ち、めぐみは『渡瀬友那』に転生し、千葉県で生まれた。
そんな友那の前に現れたのは、『サエキ先生』。
年下だった裕史とは違い、彼は十五歳年上の先生となっていた。
友那の想像では、すでに奥さんも子どももいて、順風満帆な幸せな生活を送っているものだと思っていた。
ところが、『サエキ先生』はそうは見えない。
――この人は感情を抑えて、丁寧語で話すことで、人と距離を置いている。
前世の幼なじみである彼に元気づけようと考える友那。
彼女は自分が『めぐみ』であることを伏せたまま接する。だがそれは、彼が好きなのは幼なじみの『めぐみ』であって、教え子の自分ではなくて…
この物語は主人公二人のお話だけではなく、周囲にも歴史があり、物語がある。
恋愛の皮を被った支配や暴力であったり、ただスリルを楽しむ為だけに相手を利用していたり。立場によって、周囲を傷つける恋もある。
誰かに傷つけられたり、傷つけたり。自分を大切にしたり、投げ捨てたり。それぞれがそれぞれの人生を歩む。
はたして彼女は、今度こそ一緒に花火大会を見ることが出来るのか。