叶わないはずだった恋と約束。その結末は?

『事故で亡くなった女の子が生まれ変わり、前世の幼馴染と再会して恋に落ちる』

物語のあらすじを読んだ時、このお話は「幸せなラブコメ」なのかな? それとも「時すでに遅しの悲恋」なのかな? と想像をかき立てられました。
ラストまで見届けて感じたのは、本作は「幸せ」も「切ない」もどちらも味わえる豊かな作品だということです。


主人公の友那は快活な高校生。誰もが応援したくなる明るい女の子。
対して、前世での幼馴染である冴木先生は、常識と包容力を兼ね備えた大人の男性。(かっこいいのですが決して完璧人間ではなく、生徒からは「冴木なのに冴えていない」などと言われてしまうところも好きです)

脇を固めるお友達も、愉快だったり、どこか憎めなかったり。
どうしようもない悪ーい男も出てきますが「振り切れすぎていっそ清々しい!」なんて思えるかも⁉︎

とにかく、登場人物たちに個性があって魅力的です。

ですが、主人公たちがキャラクター的に素敵だというだけでは終わらないのです。

友那は前世の記憶の影響で冴木先生に興味を持ち、深く知り合うようになっていきます。
最初はグイグイと踏み込んでいくのですが、やがて先生への恋愛感情に気づき、先生が友那を見る眼差しに込められた前世の自分への思いにあれこれと葛藤し……という、心の機微が鮮明に描かれていて、大変引き込まれます。

表面的な喜怒哀楽にとどまらない感情の追い方が丁寧で、説得力があって、時に詩的な表現が美しくて……。
作者様の作品は他にも拝読しておりますが、どの作品でも、「心」の描写が本当に素敵です。
私、本作を推しておりますが、むしろ作者様も推しています!(照)


人の心は複雑で、だからこそつながり合った時には大きな喜びが生まれる。
巧みな描写ゆえ、そんなことをしみじみと感じさせてくれる切なく幸せなラブストーリー。

最終章はきっと泣きます……!
ぜひご一読ください!

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