第5話2節 枝垂れ桜の異界屋敷 五分咲き

 親友がいなくなった。

 10年以上の付き合いのある親友だ。

 俺はもちろんだし、あっちだってきっと俺を親友だと挙げるだろうって確信はある。それくらいには親密な仲だった。

 ……認める。俺にとってあいつは心の半身と言ってもいいくらいには大きな存在だった。もちろん、本人に言ったわけではないけど。極めて軽めのノリで付き合いを続けていたけど、それでも俺にとっては十分大切な奴だったんだ。

 小中高と一緒の友人で、大学に上がってからも昼はよく顔を合わせていた。

 時折どちらかの家に上がり込んで、酒を片手にゲラゲラ笑い合って夜を明かすことだってよくあった。

 何か特別な出来事があるわけでもない。言ってしまえば俺の日常を構成する重要なパーツ。日常の象徴だ。


 親友がいなくなった。

 六月頭の事だった。

 最後に話したのは俺だったらしい。真夜中に電話を掛けてきたのを最後に、あいつは失踪した。数日後にそいつの母親から連絡が来た。俺のとこに泊っているものかと思っていたらしい。違うと答えたあと、俺は漠然とした不安ばかりを感じていた。

 もしかしたら、どこかで死んでしまったんじゃないか、と俺は確信めいた何かを感じている。

 確信めいた、じゃない。確信だ。

 あの日、最後にあいつと話した夜からずっと、俺は首のないあいつが尋ねてくる夢ばかりを見ている。


 ――大丈夫? 最近ずっと、顔色悪いよ?


 同じゼミの女の子が心配そうに俺の顔を見ている。

 それに大丈夫とぼんやりした声音で返して、俺はまた今日もふわふわとした足取りで家と大学を往復するだけの生活を続けている。周りは皆あいつが大学に顔を出さなくなったことを心配していて、どうしたんだろうねと噂している。俺だけじゃない。あいつはいろんな人の心にでかでかと居座るような、そういうやつだ。

 最近は眠るのが怖い。

 眠ったらまた首のないあいつが俺を見下ろしている夢を見る。

 あいつが何を伝えたいのかわからない。

 ……あいつは電話越しの最後の会話からして、俺の姿の何かに殺されてしまったのかもしれない。だからきっと、俺に恨みか何かを抱いているんだろう。何をするわけでもなく、ただ寝ている俺のそばに佇むだけのそれが、俺に怨嗟を向けているようで、それだけで俺の精神は摩耗していった。

 でも起きているのもつらい。

 現実ではまごうことなく、あいつが失踪したことを突き付けられる。昼間顔を合わせていた奴がいなくなったのだから、俺の日常にぽっかりと穴が開いて当然だ。それがますます夢の恐怖に拍車をかけていく。

 八方ふさがりだ。渦に巻き込まれたかのようにどんどん身体が衰弱していく。寝るのもつらい。起きていたくもない。息をするだけでどんどん心が弱っていく。最後にまともな飯を食べたのはいつだったかもう思い出せない。目を瞑ればもうすぐそばにあいつが来ているような錯覚さえある。

 これは穏やかな自殺だ。

 ただの後追いだ。

 生きていられなくなって、逃げているだけだ。


 そうして動かなくなった身体を抱えて、勝手にぼろぼろになっていった心を抱えて、ただ呼吸だけを繰り返しているだけの存在に落ち切りそうなころに。

 閉め切って明かりもついていない部屋に、ひらりと桜の花びらが舞った。


 そうして俺はこの屋敷に手を引かれた。

 ここは楽園だ。

 極楽のような、この世ではないどこか。もしかすればあの世なのかもしれないけれど、それにしては俺は天国に行けるような善行も積んではいない。

 現世と切り離されたそこで俺は数日過ごした。

 もう日付の間隔もわからない。

 ここはずっと春だ。

 魂が溶けていく。

 まるで麻酔を打たれたように。

 帰るべき場所もわからなくなったまま、春の陽気に揺蕩っている。

 隣にあいつがいる。

 ここは楽園だ。



 ◆



 とりあえず拠点にできそうな部屋を探そうと、時雨と茉奈は大雑把な見取り図とにらめっこしつつ廊下を歩いていた。大雑把もいいところで、少し歩くだけでまず部屋の数が一致していないことに気付いて頭を抱えた。これ作ったの結々祢さんか? と訝しむが、まあ異界の屋敷だしこの見取り図を作った後に部屋が増えただとかそういう可能性も考えられる。折角来たことだし、自分たちで修正しつつ改訂版を作るのもいいかもしれない。

「すごい数の部屋ですね。これを全部くまなく探索は流石に無理そうです」

「ああ。……丁寧に何畳かまでメモされてるのにその広さも合わないってどういうことなんだろうな」

「襖を外したんだとしても、今度は部屋数が合わないですしね……」

  広い玄関の空間に置かれている一枚板の衝立の脇から廊下を通って、手始めに一番初めにあった襖を開けてみたところそこはほぼ空っぽに等しい八畳の和室だった。机やタンスといった家具すらない、完全に使われていない部屋といっていい。何故だか二人とも、ここにはあまりピンとこなかったようで、襖をあけてざっと見た後にすぐ閉めて次の部屋に向かっていった。

「うーん……まあ俺は結々祢さんが大雑把だったに一票だな。あの人緊急案件以外だとだいぶ大雑把だし」

「えっあっ、わ、わたしはお屋敷が変動しているに一票賭けます! 上司の面目は立てないと……!」

「はは、それもそうだな。……お、ここは茶室だな。炉なんて久々に見た」

「炉……? 囲炉裏ですか?」

「いや、あそこに一か所正方形の形の畳があるだろ。あれを外した下に電気炭炉……いや、ここまで立派な屋敷なら本物の炭を使ってそうだな。炉炭と釜を構えて茶を立てる感じだ。季節は春みたいだし、まだギリギリ炉の季節なのかな」

 いくつか部屋を見ていった後、少し奥に進んでいったところにあったとある一室の襖を開ける。そこは時雨が言う通り茶室のようで、四畳半の空間に床の間、障子、別室に繋がるだろう別の襖が他三面にある。床の間には花が飾られていて、まるで先ほど手折ったかのようなくらいに鮮やかさを保っている。

 ふむ、と一瞥した時雨は、履いていたスリッパを脱いで畳に立ち入ってみる。踏んだ畳はどうやら新品に近くて、日焼けや色むらの類は見受けられない。丁寧に扱われているようで、特に汚れや傷などはみられなかった。先ほどから見てきた和室たちも概ねそうではあったが。

 特に気になるものはないが、二人は部屋の中央に立ってぐるりと見渡してみる。茉奈はふらりと床の間の前に膝をついて、花入れや花を興味津々に見ていた。

「……時雨さま、ここに活けられているお花、何かわかりますか?」

「あー……俺もそういうのあんまり詳しくないからな……紫の花が確か紫蘭かな。この白い花が多分ミヤコワスレって花で、こっちが多分……野紺菊だったっけ。あんまり自信ないから話半分で聞いてくれ」

「心当たりがある時点ですごいと思いますが……」

「……ん? なら野紺菊だけおかしいな」

「……? なにか変ですか?」

「ああいや、花があってるかわからないから何とも言えないけど……この二つはまあ春に飾る花なんだけど、野紺菊は基本秋ごろに飾る花なんだ。お屋敷が用意した花ならそのへん間違えそうにないが……」

 何か意味があるのかな? と茉奈は首をかしげる。スマホが繋がれば花言葉だったりを調べられるのだろうが、異界にまで電波が通じるわけもない。

 時雨は花入れの方まで見て、絶対触らないでおこう……と一人思っている。陶器のそれは見るからに高級そうな風貌をしている。このようなもの間違ってうっかり欠けでもしたらそれこそ罪悪感で死にそうだ。

 とはいえこれ以外に気になる場所はない。精々掛け軸だが、花鳥風月と書かれた掛け軸なだけだ。念のため裏も見てみたが、札が貼ってあったりといったこともない。

「うーん……あ、時雨さま。障子の向こう、お庭ですよ」

「本当だ。桜が見れて綺麗だな」

 障子を引けばその先は大きめの幅の縁側になっている。ガラスの引き戸付きであったが、前もって開けられていたようでふわりとその縁側の床に桜の花びらが舞いこんでくる。少し顔をのぞかせてみれば、ちょうどいいくらいの踏石が縁側のそばに設置されていた。ここから庭に降りれそうだ。

「……とりあえず、一旦ここに腰を落ち着けてみるか」

「そうですね……荷物、ずっと持たせてしまってすみません」

「いいよこれくらい。ギターケースと同じところに置いておくな」

 そう言って時雨は肩に背負ったギターケースと、預かっていたバッグを部屋の片隅に置いておく。と同時に、ふと気になったのだろう声音で茉奈が時雨にあることを尋ねた。

「そういえば時雨さま。結々祢さんのお知り合いの方に聞いたんですけど……時雨さまって、茶道されてたんですか?」

「……そうだけど。誰から……ああいや、一人しかいないか。オレンジ色の髪のかわいい子か?」

「えっと、はい。『泡沫くんってすっごい綺麗にお茶立てるんだよ~!』って言ってたんですが……時雨さまのお友達ですか?」

「ああ……空宮だな。中学の時に一緒に茶道部にいた」

 かわいい……とちょっとしょぼんとする茉奈に、言葉間違えたと焦る時雨。

 空宮霞、朱梨や時雨の同級生の女の子だ。死体の雨の際に、朱梨の部屋のベランダに模倣死体が降ってきた子でもある。クラスどころか学年で見ても一二を争うくらいには人気の女子生徒であるため当然のようにかわいいという表現をしてしまったが、こちらを恋い慕ってくれている女の子の前でほかの子をかわいいと言ってしまうのはかなり失言の類だろう。

 どう言い繕おうか、と一瞬思考が高速回転したが、その一瞬のうちに茉奈は立ち直ったようで、明るめの声で続く言葉を口にした。

「そうなのですね……! わたし、実家じゃそういうの全く教えてもらったことなくて。いつか時雨さまがお茶立ててるところを見たいなって思ってて……」

「あー……でももうやってないしな。あんまり覚えてないし、ここには茶道具もなさそうだし、」

 また今度いつか――……と、はぐらかすように時雨が口にしようとして。

 雑談と共に二人が炉の方を向いたと同時、二人の声が止まる。


「……………………………………。さっきなかったよな?」

「無かった、ですし……釜の中、既にお湯が沸いてますね」


 振り向いたそこには

 当然だが時雨たちが入室したときには、炉は釜があるどころか畳すら上げられていなかったはずだ。それに入室してからまだ数分と経っていない。それなのに湯気の立ち上るほどに湯が沸いているのだって完全におかしい。

 こんなことができるとしたら。

 それこそ、この屋敷自体だとか。


 ……。

 僅かに押し黙って、状況を把握したと同時。

 茉奈はきらきらとした目で時雨に迫り、対照的に時雨は冷や汗をかきながら茉奈から顔を背けている。

「時雨さま、」

「やだ。無理。やらない」

「そんな! せっかくお屋敷がご用意してくださったんですよ!?」

「茶菓子の一つもないのに抹茶立てられるか」

「見てくださいすっごく精巧な練り切りまで!」

「退路を潰さないでくれ異界屋敷……」

 茉奈の要求に援護射撃をするかの如く、視界から外れた一瞬のうちに、正客の位置の縁外に茶菓子が出現した。黒く美麗な銘々皿に乗せられた上生菓子は茉奈の言うように非常に精巧に作られている。屋敷の名に違わぬ桜のデザインのものや、柔らかな翠色に染められたものなどが用意されていて、きちんと黒文字も添えられている。

 流石にここまでちゃんとしたものを出されて手を付けないのは失礼だろう。茉奈はうきうきの様子で正客の位置に正座して、きらきらした目で時雨を見つめていた。

「大丈夫です時雨さま! わたし、時雨さまの立てたお茶ならなんだって美味しくいただける自信があります!」

「違う。違う茉奈。流石にお前の目の前で点前やるのは気恥ずかしい」

「どうしてですか!? 中学生の頃は文化祭でお茶会でお茶を立ててたとも聞いたのですがそれと何が違うのですか……!?」

「空宮全部話してるなあいつ……いやお茶会はそういう心構え出来てるからいいんだよ。流石に素面で、しかも半年ぐらいやってない所作をやるのだいぶ緊張する」

「えっかわいや大丈夫です時雨さまなら!」

「今かわいいって言いかけなかったか?」

 なんのことですか? とでも言いたげな様子でごり押しする茉奈。

 折れる兆しはいまだ見えない。じっとこちらを見つめる少女の熱い要望にやがて時雨は根負けしたようで、しばらくの見つめ合いの後に渋々、ほんとうに渋々といった様子で溜息を吐いて頭を掻いた。

「……………………………………一回だけな」

 無事に茉奈の勝利。なんだかんだ茉奈に対して甘い時雨はこうして折れてくれるというか、あんまり頭が上がらないというか。今のところ勝率八割を誇る茉奈はやったと小さくガッツポーズをして、時雨は諦めたかのように天を仰ぐのだった。



 ◇



「……ああクソ、半年はやってなかったはずなのに身体が覚えてる……」

「ふふ、お見事ですよ時雨さま。空宮さんが言ってた通り、すごくきれいな所作でした」

 ありがとうな……と複雑そうな声音で返す時雨。

 正客の茉奈は出されたお茶を少しずつ飲んでいる。熱々の湯で立てられた抹茶は猫舌の茉奈には少し熱すぎて、ほんの少し口をつけたと思えばすぐに口を離すを繰り返していた。ここには時雨と茉奈の二人しかいないから、どう飲んだっていいと時雨は最初に断っておいていた。

 数個乗っていた上生菓子は一つだけ残されている。食べないのか? と思ったが、まあお茶を飲んだ後に手を付けるんだろうなと思い何も言わなかった。

「……というか、早速飲み食いしたな。結々祢さんに言われたのに」

「あ。……でもでも、今のところ現世との縁は薄れてなさそうですし……大丈夫、だと思います。結々祢さんも言ってましたし!」

「そうだな……茉奈がそう言うなら大丈夫か……」

 釜の横に正座したままの時雨の様子をよそに、茉奈は半分くらい抹茶を飲んだところで思い出したかのように真剣な顔をした。

「と、それでですね時雨さま。一休憩できたことですし、ここで作戦会議していきませんか?」

「ああ、そうだな。とりあえずこの後の軽い方針でも決めておこう」

 時雨が頷くと同時に、茉奈は結々祢から預かった資料を数枚取り出す。

 半分ほど中身の減った茶碗とお菓子を横に避けて、時雨にも見えるように畳の上にその資料を広げた。

「こちらが見取り図で、この紙が今回の異界屋敷の記録のコピーです。真宮のお屋敷の書庫に詳しい記録も残ってました」

「ああ、地下のあれか。粒子加工されたやつか?」

「いえ、わたしが見つけたのはそれより昔のものです。未加工だったので、少なくとも60年以上は前の記録だと思います」

 粒子加工、いわゆる霊的粒子を用いて加工を施された記録媒体。書物の文字にうっすらと粒子を覆わせて固定することで、経年劣化による情報の欠落を防ぐ技術である。これのおかげで盲目である結々祢も紙の文字が読めているため、真宮邸の中でも結構重要な技術だったりする。

 そんな昔の資料よく見つけたな、と感心する時雨と、ちょっと誇らしそうにする茉奈。縁を辿ればこれくらいはお手の物だ。

「ひとまず概要から。とはいえ結々祢さんから聞いた説明とほとんど相違ないですね。数日攫ってはもてなして、その後現世に帰している無害な異界です。マヨヒガの亜種でしょうか」

「ああ。口を揃えて楽園と呼ばれる、と聞いてたが、噂に違わないな」

「おそらくは相当数の人が訪れたことがあるのだと思います、けれど報告数が少ないのは、どうやらこの屋敷を離れた後はここで過ごした記憶がおぼろげになるのだとか。故に一般の方からの報告が少なくなっています」

「……つまり対怪異職の人たちからの報告は上がっているんだな?」

「そちらからはある程度は。でも同様に記憶が曖昧らしく、確実なことはあまり言えないとのことです。でも無害であることは確実であるとのこと」

 ふむ、と時雨は資料をぱらぱらとみていく。60年以上前からこの屋敷による数日の失踪は度々起こっていたようだが、それにしては茉奈の言う通り報告件数が少なすぎる。ここ数か月で10人以上がこの屋敷に招かれているのだから、単純計算でも4ケタレベルの報告件数になっていたっておかしくないはずだ。

「ですので、こちらの報告書はあまりあてにならないかもです。ので次はこちらを」

「これは……うわ、よくこんなもの持ってきたな」

「あ、流石にこれもコピーです。結々祢さんが参考にって」

 次に茉奈が取り出したのは真宮当主特殊記録媒体、言ってしまえばちょっと特殊なメモ帳だ。ただし真宮家当主しか閲覧不可、記入改竄不可、処分不可の、過剰なまでの呪術的処理が施された半呪物的なものである。真宮の当主しか知りえないもの、焚書が行われ抹消された事柄に対しての記録などを残し、世界からの修正機能を僅かだが跳ね退けるほどの機能を持つ極小の特異点。それのとあるページの複写を結々祢から貰ってきていた茉奈は、そこに書かれた文字を順に指差した。

「これは54代目と書かれていたので、まごうことなく結々祢さんが書いたものです。結々祢さんや歴代の真宮家の方々はあの桜……真宮のお屋敷の、通年咲いてるあの桜の桜守を勤めているみたいですね」

「だから屋敷からの依頼も来たのか……これは、結々祢さんが実際こっちに来た時のメモかな」

「おそらくは。結々祢さん、10年前に一度ここに来たことがあるそうですし」


・飲食の類に穢れはなし

・屋敷は平屋 地下室の類は見受けられず

・最奥の座敷には注意すべき 神域化がひどい

 ⇨心理的防護がみられる

  通常招かれた者たちはこの座敷には立ち入ろうとしない?

・怪異の類は発生しない

・夜0時を過ぎた頃に中庭中央の一際大きな枝垂れ桜を見ると、その下に既に亡くなった人が現れる

 ⇨自身の大切な人だと思われる/身近に死亡者がいない場合は不明

  屋敷(あるいは異界全体)の粒子の一部が形どった幻影 怪異認定はなし


「これは……かなり助かるな。特に最奥の座敷とかは知らずに入ったらまずそうだ」

「そうですね……神域の類は居るだけで魂の外殻が溶けかねないですし」

「心理的防護はアレだな。ここに来る途中の、桜並木の間を通れなかったのと同じようなものだな。最奥の座敷を探索するってなったら、最低でもこの防護の解除と神域対抗の術の用意は必須だ」

「……恐らくこの言いぶりからすると、最奥の座敷はおそらくこの異界の核か、あるいはそれに準ずるくらいの場所なはずです。時雨さまの言う通り、無策で行くのは無茶だと思います。……なんか、雰囲気的に結々祢さんは入ったような感じはありますが」

「入ってるだろ、あの人なら」

 そうですよね……と苦笑いする茉奈。

 時雨はこのメモ書きや過去の記録を一通り頭の中に入れて、今回の案件に関して思考を回した。

「問題はこの過去の記録と今回で、何が違ってきてるかだろうな」

「……といいますと、」

「ぱっと考えついただけだが……まず今回の案件、考えられる可能性が二つある。まず一つが『この異界屋敷のシステム面に何らかの異常が生じた』場合。二つ目が『何らかの怪異が入り込んだことにより異常が生じた』場合。要は内部エラーか外的要因なのか、だ」

 そう考えると、と時雨はメモ書きの文字を指差しながら言葉を続ける。

「前者だった場合は、この最奥の座敷はほぼ確実に探索必須だ。その代わり怪異の類は発生しない、夜の桜の下で死んだひとに会える、とかはメモ通りだと思う。……問題は後者だった場合だ。この場合は最悪、過去の記録で言われてる異界屋敷の特徴すらあてにならなくなるかもしれない。ある程度の警戒は常にしておいた方がいい」

「そうですね……やはり、この部屋を拠点にして防御結界を構築した方がいいかもしれません。何かあった場合咄嗟に逃げ込める空間を作っておくのは重要ですし」

「ただ……怪異が居る、となると少し疑問が残るな。外から入ってきた異物なら尚更、この屋敷が感知できないとは思えない」

「それはわたしも間違いないと思います。結々祢さんにSOSを飛ばした屋敷の意思は、言ってしまえばこの異界のシステムそのものと言ってもいいと、結々祢さんも言っていました。言うならこの世界の神様と言ってもいいくらいですが……」

「……そのあたりはおいおい調べていこう。とりあえず、今のところは何らかの怪異がいると仮定して動いた方がよさそうだ。いないならいないに越したことはないし」

 はい、と頷く茉奈。

 あとは先ほどからずっと見ていた見取り図の資料くらいか。とはいえこの見取り図をあまり信用していない二人は、とりあえず話半分くらいの気持ちでそれに目を落とした。

 今二人がいるのは屋敷の中央一歩手前といったところ。とはいえこの屋敷は大雑把に言うと口の形になっていて、途中で西側と東側に棟が分岐している様な形になっていた。それが屋敷の奥でまた合流するような構造で、中央の空白には中庭があるようだ。おそらくここに、結々祢のメモに書いていた桜があるのだろう。

 今二人がいるのは東側の中央付近。茶室の障子の向こうに広がる庭は外庭のようだ。東棟に空白の和室が多いのは、こちら側が客間のような用途として使われているのだろう。反対に西棟には実務的な部屋もちらほら見受けられる。実際のところこの屋敷に常駐している人はいないので、ただ形を模しただけなのだろうが。

「とりあえず空白の和室は別として、台所だったり風呂だったりの位置は流石に一致してるだろ。一旦この部屋と周辺の防護を固めたら、見取り図の一致がてらぐるりと一周回ってみよう」

「そうですね。一度全部屋見てみて、失踪した方がいないか確認してみましょう」

 一応、失踪者の捜索が一番の目的でもあるし。

 ひとまずこの後の行動を決めた二人は、すこし気が抜けたかのように息を吐いた。話し込んでいるうちに抹茶は大分冷めたようで、茉奈は残っていたお茶の残りを飲んだ。相当高級な抹茶を使っているようで、苦みも少なくどこか甘さすら感じられる。

 ごちそうさまでした、と口にしながら茉奈は時雨に茶碗を返す。

 それを受け取った時雨は、一切の迷いのない所作で仕舞の手順を重ねていった。やはり何故か身体に染みついてしまっていたようで、特に何も考えずとも次の動きができてしまっている。

 大方片付け終わって、だいたい最初の配置にもどったころ。ふと時雨は茉奈が茶菓子を一つ残していることを思い出した。

「……茉奈、それ食べないのか?」

「あ。そうでした」

 時雨に言われて気が付いた茉奈は、隅に避けていた皿を手に取る。しかしそのまま食べるのではなく、正座したまま膝を繰って時雨の方に擦り寄って、そうして茉奈は黒文字に刺した小さい練り切りを時雨に差し出した。

「これは時雨さまの分です。時雨さま、甘いもの大好きでしょう?」

 ……。

 これはどう見ても、あーんしてる形というか。

 目の前の少女は完全に善意でやっているからちょっと拒否しづらいというか。

「……。茉奈、気持ちはうれしいがそれはお前に出されたものだから、お前が全部食べていいんだぞ」

「む。でも時雨さまも食べてみたいですよね、これ」

「否定はできないが……」

「ふふ。わたしに出されたものなので、わたしがどう食べようがわたしの勝手なのです。時雨さま、遠慮せずに」

 はいあーん。

 にこにこした顔で菓子を差し出す茉奈の様子と上等な菓子への興味、あと自分の中の羞恥心を天秤にかけ……数秒迷った時雨は、茉奈に従うように口を開いたのだった。……うん、正直これまで食べたどの和菓子より美味しい。



 ◇



「……よし。防御結界、三重に張り終えました」

「ありがとう茉奈。とりあえずこの茶室と隣の部屋を拠点にしておこう」

 昼下がりのお茶会も済んで、時雨と茉奈は早速動いていた。茉奈は時間をかけてこの茶室と隣の和室の防御を固めていた。とはいえ結界を張ったのは茉奈だけで、時雨はそれが完成するまでの間隣の部屋や近くの水屋を調べまわったりしていたが。

 茉奈の防御結界の完成度は時雨のそれを遥かに凌ぐ。

 攻性の術式を一切使えないため単独では怪異を撃破できないが、時間を稼ぐのなら茉奈の技術は一級品だ。

 これで何かに追われたとしても、この部屋まで戻ってくればどうにかなる。それを再確認して、二人は屋敷の探索を再開した。


 いつの間にか、時間は夕暮れに差し掛かっていた。

「……驚きました。そんなに時間が経ってたんですか?」

「ああ。現実世界でも今は17時ぐらいらしい。向こうはまだ日暮れまで時間があるが……こっちは春頃だから、日が沈むのが早いのかもしれないな」

 差し込む日差しは酷く柔らかなものになっていて、オレンジ色の空が広がっている。板張りの縁側は橙色に染められていて、二人の影も長く伸びていた。

 茉奈の結界構築には数時間を要した。特に急ぎじゃないので速度より質を重視した結果だ。没頭していたおかげで二人は昼飯を食べ損ねていたりする。

 順々に部屋を見ていっては、自分ら以外の人影がいないかを確認して次へ。

 とりあえず中身を探索するのは後にして、ぐるりと全部屋を確認する作業を続けている。ちょうど半分に来たくらいだろうか。

「……ここ、ひょっとして……」

「……ああ。この襖の奥が例の座敷だろう。ここは後回しだ」

 奥まった場所。

 あまり日光が入らないような廊下を少し進んだ先にあった、豪華な装飾の施された襖の奥が、結々祢の言っていた最奥の座敷だろうと二人は直感した。

「……これは、……時雨さま、ここはまずいです」

「……変な縁でもあるか」

「変どころじゃないです。……死の縁が、襖から滲んでいるほど。この中は、無策で入ればすぐ死にます。死ぬならまだいい方かもしれません」

「だろうな。とりあえず今はスルーしよう。どのみち入れないし」

 わかりました、と頷く茉奈。

 彼女の目には黒く鈍く光る縁の糸が、まるで襖に施された刺繍のように滲んでいるのが映っていた。

 特段こわいものではない。近寄らなければ死なないのだし、この黒い糸があるからと言って、怖いものがいるとも限らない。この死の縁は、恐らくこの座敷の神域化によるものだろう。その対策さえ打てれば、この糸に絡め捕られることもない。

 そうして二人は見取り図にメモをしてその場を離れた。

 もらった見取り図を修正しながら進んでいるが、あまりにも部屋数が合わないのでいっそ一から描き直した方がいいんじゃないか? とも思っている。


 例の座敷から少し離れた頃。

「……時雨さま」

 ふと、隣にいる茉奈が何かを掴むような仕草をして、時雨に声を掛けた。

 何かを持っているようには見えない。だが確実に彼女は何かを掴んでいる。それを察した時雨は、すぐに真剣な顔で言葉を返した。

「なにか縁があったか」

「はい。……こちらです、すごく希薄な縁で……これは多分……!」

 ととと、と駆けだす茉奈の背を追う時雨。そのまま彼女はとある部屋の前で立ち止まり、その障子を勢いよく開けた。


 ――中には、一つの人影があった。


 おそらく大学生くらいだろうと思われる男性。くせ毛の茶髪に柔らかな雰囲気の服装をしていて、閉じられた目は少し長い前髪がかかっている。畳に身を預けるように横になって、まるで息絶えたかのように静かに眠っている様な、そんな様子を目にした二人は、すぐにその傍に駆け寄った。

「だ――大丈夫ですか!? しっかり、意識はありますか!?」

「……息はある。でも細い。心拍は――ああ、ちゃんとある」

 咄嗟に揺り起こそうとする茉奈と、冷静に呼吸と心拍を確認する時雨。どうやら生きてはいるようだが、まるですぐ息絶えてもおかしくないような雰囲気を彼は纏っていた。

 時雨は一瞬で、結々祢から預かった失踪者の資料の顔写真を脳裏で洗い出す。

「……天城。お前、天城祐樹で間違いないな?」

「……………………………………、ぁ」

 時雨が彼の――天城のフルネームを告げると同時、僅かに彼の身体が揺れ動く。そして緩やかに、薄く瞳が持ち上がって、ひどくぼんやりとした眼で二人のことを見上げた。

 そこではっとした茉奈が、急いで目を凝らして彼の赤い糸を探す。

 もうほとんど見えないほどに縁が希薄になった彼は、恐らくこうしているともう現世に戻れなくなってしまう。薄くぼやけた糸を見つけた茉奈は、咄嗟にそれを自分と結んでいた。

「……やっぱり。もう名前も零れ落ちるほどだったか。大丈夫か? 俺達の声が聞こえるなら、何か反応してくれ」

「……おれ、は、」

「天城さん。天城祐樹さん、ゆっくりで大丈夫です。自分のフルネームを、一度口にしてみてください。それで幾分か、意識もはっきりするはずです」

 茉奈が促すと、天城はゆっくりと自分の名前を口にする。

 それで十分に存在が確立できたのか、まだぼんやりした意識ではあるがだんだんと声音もはっきりしてくる。時雨が彼の状態を起こして、壁に寄り掛からせるようにして、そうして二人は彼と目線を合わせるようにしゃがみこんだ。

「……よかった。俺たちは貴方を探しに来たんだ。無事に生きていてよかった」

「……おれを、さがしに、」

「はい。あなたを含め総14名がこの異界に招かれたままとなっています。その捜索のため、わたしたちもこの屋敷に来ました。……気分は悪くないですか? なにがあったのですか?」

「気分……気分は、なにも。なにもない。ここは……」

 まるで心此処に在らずだ。

 どうやら身体に異常はなさそうだが、どうにも心が上手く働いていない。そんな印象を受けた二人は、一瞬だけ目配せをして各々動き出した。

 茉奈はこの部屋の防御を。

 時雨は情報の聞き出しを。

 茉奈は立ち上がってこの部屋の壁に手を伝わせて、時雨は改めて天城の目の前に胡坐をかいて目を合わせた。

「……自己紹介が遅れたな。俺は泡沫時雨、こういう異界とかにそこの女の子……茉奈と行ったりしてる。こういう事例はよく見てきた」

「……しぐれ、か」

「ああ。俺たちはこの異界について調べてる。貴方の覚えてる限りで構わない。なにか、わかる範囲でここのことを教えてくれないか」

「……わからない。なにも……なにも、かんがえられない」

「……ここに来てから、何があった? 覚えてる限りでいい、記憶を辿れないか」

 辛抱強く時雨は天城に声を投げ続ける。

 ぼんやりとした意識を辿るように……酷く、緩慢な仕草で過去を振り返るような、そんな様子の後に。

「……桜に、」

「ああ」

「気が付いたら、桜の木の下に居て……なにも考えず、無意識に屋敷に入って……」

「……」

 意識操作の類かな、と時雨は内心であたりをつける。

「それで……よく、わからないけど……ずっと、もてなされてる、と思う」

「うん」

「ここにいるだけで……こころが溶けていくみたいだ。つらいことをなにも考えなくていいって、まるでぼろぼろになった傷に麻酔をかけるような、そんな……幸せなゆめを、見ているような……」

 ぼんやりと、まるで焦点のあっていない目。

 それはまさしく心がどこかに行ってしまったような、あるいはその外殻が溶かされているような。ずっと、心地の良いぬるま湯のような幸福に浸されているような、そんな様子。

 ……ずっとここにいたら、恐らくはいつか空っぽの廃人のようになっていったのだろう。今はギリギリ、茉奈が縁を繋いだので僅かに持ち直したようだったが。

 ふと、天城は誰かを探すように僅かに視線を動かした。

「……あいつは?」

「? ほかにだれかいるのか? ……ちょっと待て。この資料の中にそいつはいるか?」

 咄嗟に時雨はギターケースを引き寄せて、中に入れていた失踪者リストの顔写真をパラパラと見せる。しかしこの中にはいないようで、天城はふるふると力なく首を振った。

「……親友がいたんだ」

「っ、……それで?」

「そいつが六月にいなくなって……多分、死んだんだと思う。でも、ここに来て、そいつがいたんだ」

「……その人の特徴は?」

「あいつは……、……。……あいつは、……わからない。ぼんやりとして、なにも……」

 知っているはずなのに、その存在がもうわからなくなっている。

 きっと大切なひとなのに、それが思い出せなくなりつつある。

 それを一瞬で悟った時雨は、一瞬辛そうに顔を顰めて、そしてギターケースの中に入れていた小袋を引っ張り出した。

「天城さん。この中で、その親友が好きだった味はなんだった」

「…………わからない」

「……頑張って思い出してくれ。……親友、なんだろ」

 大切な人なんだろ、と訴えながら、時雨は畳の上に大量の飴を転がした。

 いつも糖分補給がてら常備している飴たちだ。この異界に染められかかった意識を戻すには、少しでも現世の食べ物を与えるしかない。

 天城はぼんやりとそれを見下ろして――やがて、ゆっくりと一つ、飴に手を伸ばした。普通の、レモン味の飴だった。

 それを開けて、天城の口の中に放り込む。天城は拒否することもなく、ただぼんやりとその口の中の飴を転がしていた。

「……さっきの」

「……これか?」

「さっきの写真の中で、ひとり……見かけた。ずっと奥の座敷に行くのを見た」

「――奥の座敷にか!?」

 そう言って、天城は時雨の持つ資料の一枚を指差した。

 失踪者の一人。どちらかと言えば最近失踪した男性だ。それが、さっき見てきた奥の座敷に行ったということは、つまり――

 ……おそらくではあるが。

 もしも失踪者が最奥の座敷に入っているのなら、もう手遅れの可能性が高い。

(……どういうことだ? この屋敷がそんなことをするはずがない。現世への縁が切れて帰れなくなっていただけじゃなかったのか……!?)

 この異界屋敷がそんなことをするはずがない。

 というよりそもそも、目の前の彼の様子も前例と全く違う。

 異界屋敷が精神に掛ける麻酔は酷く軽微なもののはずだ。こんなにも、自我が失われるほどに強く作用するはずがないし、させることもない。

「……天城さん」

「……」

「……貴方は、ここに来る前は……生きるのが、つらかったですか」

「……ああ。あいつが……親友が、吉木がいなくなってから、ずっと。息をするだけで心が欠けていった。あいつがいなくなった時点で、俺の心は半分欠けたんだ」

 心の中の澱みを零すように、ぼんやりと言葉を零していく。

「この屋敷はいいところだ。楽園だ。俺を呼んで、なにをさせるわけもなく、ただ食事や寝床を出して、心地の良い空気で満たして、綺麗な景色を見せて、あいつと会わせてくれた。、心の傷が治っていくような、そんな気がしたんだ……」

「……。外には、出たいですか」

「……いいや。おれはもう、ここで、やさしいゆめを見ていたい。

 ――ここは、楽園だ」

 ふるふると、力なく拒絶の意を示す天城。

 その気持ちが痛いほどわかる時雨は、これ以上何も言えるはずもない。

 ……いなくなった、きっともう会えない親友にもう一度会えたのだ。それを否定して無理に連れ出すことは、今の時雨の心境では到底出来やしない。

 わかった、と小さく頷いた時雨は、なんでもない顔を取り繕って立ち上がった。

 そして踵を返して、茉奈と一緒に部屋を出る。茉奈の方も防御結界を引き終わったようで、大人しく部屋の外に出てきた。


「……時雨さま。彼は……とりあえず、わたしと縁を結んでいます。応急処置ではありますが、防御結界と併用すれば少なくとも、放っておいても死ぬことはないと思います」

「……ああ。茉奈、次の目的地ができた。一度、探索まではしなくともあの最奥の座敷には行くしかない。失踪者が中に立ち入っている可能性がある」

「……わかりました。となれば、あの心理的防護を解除する鍵を探す必要があります。……おそらくですが、立ち入った者たちは、」

「もう死んでいる可能性が高い。それでも、これは異常事態だ。このままだとこの『枝垂れ桜の異界屋敷』自体が、危険度の高い異界として認知される恐れがある」

 ぎゅ、と拳に力を入れてここではないどこかを見つめる時雨。それが内心で何かに耐えている仕草だと知っている茉奈は、心配そうに彼を見上げて――それでも、彼の近況を知らない茉奈では、掛ける言葉も思いつかない。

 不安そうに彼を見て、それでも今は仕事を遂行するだけだと思い直す。

 力の入ったその手に、恐る恐る自分の小さな手を重ねて。

「……時雨さま。行きましょう」

「……ああ」

 茉奈の言葉に応じるように、時雨もやがて歩き出した。

 目標はこの異界の異常の解明。目下の目的は最奥の座敷への鍵の入手。

 未だ何があるかも、何が居るのかも不透明なまま。

 二人は、この楽園の中を彷徨っている。



 ◆



 親友が帰ってきた。

 もう溶けそうな心ではあまり喜怒哀楽が働かない。

 でもお前がいるだけで俺は、もうずっとここにいていいって思うんだ。

 お前は俺の心の半身だ。失えば当然、俺の心は欠けてしまう。

 ……うん。お前の言う通り、ずっとここにいるよ。

 こうして融けるように死ねるのなら、それはそれで幸福だろう。

 ここは楽園だ。

 もう、何も考えたくない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

朱色の空匣 紅夜チャン @kouya016

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ