主人公の雨山は事故物件の検証を生業とする変わった探偵である。ある日、大学の『廃墟サークル』の活動で行方不明となった息子の捜索を300万円で依頼される。金に釣られて廃墟と化した因習村へ捜索に向かう。そこで雨山は謎の少女と遭遇することになる。
本作はある種の、ホラー系TRPGのシナリオ、あるいは脱出ゲームのような趣がある。そこには原因があり、ロジックがあり、解決策が散りばめられている。
主人公は探偵であり、霊能力者ではない。不動産業者からの依頼で事故物件の調査を行うが、むしろ怪異でないことを確認するためである。ただし扱う対象のせいで、たびたび奇妙な依頼を受けることがあるようで、少なからずそういった経験はしてきているようだ。その観察眼による廃村の残置物や心霊現象の描写は恐怖を掻き立てる。そこから得られた情報をもとに、心霊現象の裏にある『何故そうなったのか』を暴き立てるのに、探偵という職業ほどピッタリなものはない。
また、出会った少女を右腕的存在として、廃村の隠された過去に迫っていくことになるが、おじさんと少女のバディものは強い組み合わせだ。雨山と少女は馬が合うようで、どこか緊張感のない掛け合いなどを見せる。しかしお互いに抱えた過去と現在の立場ゆえに、相手に抱く感情は暗く湿っている。だからこそ彼らは信頼関係を結ぶに至ったのだろう。
ホラーとしての不気味さと、探偵小説としての謎解き。そして雨山と少女のどろりとした絆。それらが丁寧に積み上げられた一作である。
【レビューコンテスト応募】