孤高な主人公と悪役ヒロインが送る、ロックな青春物語

※読み合い企画からのレビューです

ひょんなことからスクールカーストの最上位から転げ落ち、いじめられるまでになったヒロイン・京華が興味を抱いたのは、クラスにいてもいなくても変わらないような無口な主人公・誠人だった──という導入の本作品
ぼっちと嫌われ者の二人で始まるこの物語の第一章は、誠人の幼馴染みと三人で組んだバンドが学園祭で演奏するまでを描いている
本作品のヒロインは、非常に珍しい
何故なら、物語冒頭の京華の態度は、カースト最底辺まで落ちても仕方がないと思えるほどに傲慢で、自分勝手で、わがままだからだ
凡百の小説であれば悪役のまま終わるか、良くても改心が描かれる程度だが、本作品では見事にヒロインを務めている
それも、自分勝手でわがままなところはある程度そのままに、にも関わらず可愛らしく思えるように書かれているのだから、作者の腕の非凡さが窺えるだろう
その文章力の高さが如実に表れるのは、クライマックスの演奏シーンだ
当然だが、小説を読んでも音は聞こえない
小説にとって演奏シーンは鬼門であるはずなのに、まるで読者自身がギターを掻き鳴らしているような、ギャリギャリと指に響く弦の感触が伝わるような、圧倒的なリアリティが目から脳にぶち込まれる
こんなシーンをカクヨムで読まされるとは思ってもいなかったので、まさに圧巻だった
是非、彼らの等身大の青春を楽しんでみてほしい
時間の無駄には決してならないはずだ

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