現代社会に足りなくなった「人情」がここにはある。

 作者さまが手がける時代もの「柿ノ木川話譚」の最新作、お恵の巻。
 物語は凄腕のヤブ医者と、そのヤブ医者が匙を投げてしまった時だけに紹介される診療所を舞台に展開していきます。
 身体中に激痛が走り、この時代では不治の病とされる癌。それに蝕まれたとある母親は覚悟しつつも、自分の娘の白無垢姿を見られないことだけが心残りだった。
 それをしった枝鳴長屋の面々は、再来の世話焼きでその夢を叶えようとしますが──、物語は思いもよらぬ方向へ。いつもの面々がたどり着いた真実とは、一体──?

 いやぁ、この辺りの話の転がし方がやっぱり実力ある作者さまならではで、気がつけば一気読み間違いなし。自信を持ってお勧めできる作品に仕上がっています。
 シリーズものなので第一シーズンから読んで欲しいのですが、物語の長さをまるで感じさせない作者さまの手腕は本物。あなたが物書きならばきっと何かを得られるのは間違いなく、読み専の方々はきっと「お気に入りのシリーズ」になること請け合いです。

 今回のお話は、枝鳴長屋の面々が持つ「人情」が溢れるお話。現代社会に足りなくなっているこの「人情」を、味わってみませんか?

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