戦争の、大きな爪痕。市井の人々が灯す、希望の明かり。

文章で魅せるドラマ。
ここまでの物語は、なかなかにお目にかかれない。

戦後という遠い時間を舞台にしながらも、その筆致、空気には、
少しの違和感もない。
景色が、音が、声が、響きが。
まるで今ここにあることであるかのように、脳裏に浮かび上がる。

それは身を寄せ合う、あまりに小さな力だった。
戦争の傷跡を背負う名もない庶民の暮らし。余裕など、あるはずがない。
ようやく手にしたささやかな居場所さえ、安寧の場ではない。

一つ一つを埋めていく。ただひたすらに、生きるため。
そんな中でも人は支えあい、だからこそ紡がれていく歴史が蘇る。

分断の時代を迎えた令和の世において、
広く読まれてほしい傑作。

もしあなたが傷を負っているのなら。
彼女たちの物語は、心を癒す一杯の粥のように、胸中に染みわたるだろうと思う。

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