花を愛でるように、言葉を育てよう
- ★★★ Excellent!!!
この物語を読みながら、私はずっと、夏の陽射しの中で揺れる白い花を見つめているような気持ちでいました。
『君が消えるまで、私は花を愛でよう』は、静かな町で始まる一つの出会いと、その名に込められた祈りのような優しさが、じんわりと心に広がっていく作品です。言葉も常識も持たなかった白花が、「わたし」と名乗る瞬間、その一言に込められた重みがとても印象的でした。そしてテレビから学んだ「見て」「だめ」といった言葉に、彼女の心が少しずつ形を持ちはじめていく様子は、まるで蕾が綻び始めるようで、胸を打たれます。
白花の不思議さも、豊や杏のあたたかなまなざしの中では、どこか懐かしく、大切な何かのように思えてくるのです。
穏やかで、でも少しだけ切ない。そんな時間のなかで紡がれていく彼らの夏は、きっと読んだ人の心にも、小さな花を咲かせてくれると思います。