職員室ごと転移、先生たちの会議が日常を守る静かな冒険譚に胸が熱くなる話
- ★★★ Excellent!!!
学校の中心で会議が息をする――職員室が草原に切り取られ、電気も通信も絶たれたその瞬間から、物語はサバイバルと日常の境目を確かに歩き始める。頼れる校長と切れ味鋭い教頭、気配りの養護教諭、理科主任の八乙女先生、奮闘する実習生の上野原さん。181話の厚みは、そのまま人間関係の温度になって読者の胸を温める。ここでの『会議』は結論を急がず暮らしを守るためのアクションで、読むほどに頼もしさが増していく。
忘れがたいのは最初の『転移』の確認だ。激震の直後なのに机上は乱れず、カーテンを開けると一面の緑。八乙女先生が外に出て振り返ったとき、校舎の周囲だけが半球状に残されていると分かる。草の匂い、遠い林、円く切り抜かれた校舎という発見の連鎖が、恐怖を『皆で話す』力へ変換し、寝床の割り振りや非常用トイレの運用といった具体の決定へ繋がっていく。緊張の合間に鶏の酒蒸しを分け合う温かさまで描いてくれるから、この物語は不安より先に「暮らせる」を信じさせてくれる。
注
ネタバレを避けるため、最初の10話くらいまでの感想にした。内容も良いし、読みやすい。