影に潜む姫という導入から、異空間〈夢見島〉の監視体制へつながる展開が興味深く、特にデバイス支給を受けた被験者たちとの対峙の場面に読み応えを感じました。
一つ一つの動きが追える丁寧なバトルシーンに引き込まれ、クロエが感情に抗いながらも〈魔猫〉の子供を救う決断に至る流れが印象的です。
凪・マヤ・エイジという協力者の会話が世界観の裏付けとして機能し、情報統制を敷く〈AZテック〉への不信が徐々に積み重なっていくため、物語進行は緩やかですが、その分キャラクターの心情と現場の緊張が濃く描かれていると感じました。
次の転換を期待しながら、これからも読み進めたいと思います。
「ヒーローになりたい」と願いながらも、教室では舌を噛んでクラスに溶け込めないクロエ。そんな彼女が、夜になると黒衣に身を包み、寮の屋上から校舎の屋上へ影を伝って跳び移り、満開の夜桜を見下ろして自撮りし、「ばあちゃんの薔薇も好きだけど、こっちの桜も綺麗です」と画像を送る場面がとても好きでした。人付き合いは不器用なのに、人助けのときは迷わず影の力を伸ばし、クラスメイトの白亜を救い、異空間で魔獣と人間の残酷な関係に立ち向かう。群島連邦、異能史、AZテックといったスケールの大きな設定の中で、「ひとりの少女が、それでもヒーローであろうと足掻く物語」として読めるのが、この作品のいちばんの魅力だと感じました。黒衣の姫が、夜ごと躓きながらも少しずつ「ヒーローへの道のり」を進んでいく姿を、これからも見守りたくなります。