落ちこぼれ少女の復讐譚

自分の後継者を育てるために、候補として数十人の赤子を強奪して育てた老婆。主人公はその中の一人。
というあらすじを読むと悪いのは老婆だけかなとも思えるのですが、登場人物達が清々しいまでにみんな嫌な奴なんです。(褒め言葉)
まともなのは主人公を入れて二人だけなのですが、ここでは圧倒的弱者です。単純に才能がないだけではなく、そのせいで周りの子どもたちからも見下され、虐げられるような立場に置かれています。何せ老婆の毒魔術を後世に残すためだけに育てられている子どもたちですから、情報は制限され価値観は歪み、まともに育つわけがない。
そんな中を生き延び、爪を磨き続けた主人公が、復讐するかの如く自分を苦しめた者達を狩るまでを描くのが本作です。

最近の復讐モノって実は主人公が権力なり武力なりで最強で、それを使って相手をサクッと蹂躙してスカッとする、みたいなものばかりなイメージがあるのですが、こちらは全然そんなことなく。
序盤に出てきた設定がほぼ全てです。それらを育て、駆使して、必死に着実に獲物を狩っていく。なけなしのまともさを犠牲にして、目的を果たすために生き延び続けるのです。

才能もなければ仲間もいない。落ちこぼれ少女の泥臭くも華麗な復讐譚です。