第3話 約束

 二〇二四年の年忘れのある日。


 信望していた人が具合を悪くし、チャットで死別を仄めかされた。


 もしかしたらその日以来彼は亡くなるかもしれない。


 生まれて死に向かうのは当然だ。


 僕は彼とある約束をしていた。


 彼の死に際には、これまでの創作経験を活かしてエッセイを書いて欲しいと。


 エッセイを上手く書ける自信があった。


 なのにいざその時に対面してみると、稚拙な文章しか思い浮かばない。


 自己憐憫から涙が止まらないし、今、声を出すと震えたものになる。


 彼の死後の人生を考えると。


 悲しさしか覚えない。


 チャットで彼に「必ずエッセイ書くからな」と言った瞬間からもう駄目だった。


 彼が心の拠り所でもあった。


 彼の言葉に助けられたこともあった。


 だから駄目だった、胸中からこみ上げる悲しみで涙をこらえることができない。


 しかし、これは彼の杞憂で終わる可能性もある。


 これが二〇二四年の年末の時期に起きた大きな出来事の一つ。


 約束を忘れないうちに、書き示しておこう。

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人生 サカイヌツク @minimum

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