概要
目覚めた瞬間、全てが変わっていた。叶ったはずなのに、もう遅かった。
婚約者――杦田花緒里が交通事故に遭った。彼女は目を覚まさない。本人の誕生日が来ても、結婚式の予定日が迫っても、目を覚まさない。やがて県外の療養センターへ転院される。見舞いに通うのが前よりも難しくなる。
宙ぶらりんの孤独と暗澹たる気持ちを抱えたまま、伊津野喬久の心と時間には空白ができはじめる。そこに新しい人生が差し込んで――始まりを迎えた頃、2年8ヶ月ぶりに眠り姫は目を覚ます。
「花緒里…あなた、ずっと眠ってたのよ。眠ってる間に…式を予定してた日は過ぎちゃったの」
福島にあるスイーツ工場には、今年も「はなよめ」の季節がくる。だがそれは過ぎた香り。熟れすぎて黒くなってしまった、噎せ返るような桃の香りだった。
宙ぶらりんの孤独と暗澹たる気持ちを抱えたまま、伊津野喬久の心と時間には空白ができはじめる。そこに新しい人生が差し込んで――始まりを迎えた頃、2年8ヶ月ぶりに眠り姫は目を覚ます。
「花緒里…あなた、ずっと眠ってたのよ。眠ってる間に…式を予定してた日は過ぎちゃったの」
福島にあるスイーツ工場には、今年も「はなよめ」の季節がくる。だがそれは過ぎた香り。熟れすぎて黒くなってしまった、噎せ返るような桃の香りだった。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!冷たい記録の隙間に息づく、剥き出しの体温と不器用な足掻き
拝読させていただきました。
無機質なカルテという導入から始まり、1-1から1-3へと日常の輪郭が歪んでいく変則的な歩みに終始惹きつけられおもしろいっ!!
周到に張り巡らされた違和感の筋道の中で、登場人物たちがこぼす迷いや割り切れない感情の揺らぎが、飾らない生きた言葉で丁寧に掬い上げられていて飽きませんでした。
ただ綺麗に解決していくだけではない、人間らしい泥臭さや手探りの痛みが残されているからこそ、物語に確かな説得力。
このカルテの先にどんな真実と彼らの選択が待っているのか、静かに息を潜めながら続きをゆっくり楽しみに追わせていただきます。
よろしければ私の作品の感想もいただけると、…続きを読む