概要
着陸まで、あと一時間。隣席の老人は、十五分で消えた。
「窓の外の、雲の上に、あり得ないものが見えるんです」
羽田発・新千歳行きの朝の便。フリーの記者・高橋賢二の隣で、見知らぬ老紳士は怯えた声でそう囁き、数分後、糸が切れたように眠り込んだ。
席を外したのは、わずか十五分。戻ると、老人は忽然と消えていた。荷物だけを残して。
逃げ場のない機内。なのに乗務員は取り合わず、目撃者の証言は食い違い、親切な隣人たちは、なぜか同じ方向ばかりを指さす。
やがて高橋は気づく。自分の持ち物の中に、老人が残していった、爪の先ほどの一枚があることに。
三年前、確証が足りずに記事にできなかった巨大な不正。その最後のピースが、いま、掌の中にあるのかもしれない。
中身は確かめられない。味方はいない。着陸まで、残り一時間足らず。
――「書けなかった記者」が、確証の
羽田発・新千歳行きの朝の便。フリーの記者・高橋賢二の隣で、見知らぬ老紳士は怯えた声でそう囁き、数分後、糸が切れたように眠り込んだ。
席を外したのは、わずか十五分。戻ると、老人は忽然と消えていた。荷物だけを残して。
逃げ場のない機内。なのに乗務員は取り合わず、目撃者の証言は食い違い、親切な隣人たちは、なぜか同じ方向ばかりを指さす。
やがて高橋は気づく。自分の持ち物の中に、老人が残していった、爪の先ほどの一枚があることに。
三年前、確証が足りずに記事にできなかった巨大な不正。その最後のピースが、いま、掌の中にあるのかもしれない。
中身は確かめられない。味方はいない。着陸まで、残り一時間足らず。
――「書けなかった記者」が、確証の
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