概要
その家には、おばあさんがいた。わたしは、不在票を入れた。
地方都市のはずれ、古い住宅地を赤いバイクで回る郵便配達員の「わたし」。期間雇用でこの局に入って六年、三区を受け持って五年になる。どの家の郵便受けに誰の名前があるか、たいてい顔まで覚えている。
仕事は配るだけではない。転居届が出されると、前の住所を訪ねて、本当に引っ越したかを確かめる。本人がいなければ、同じ家の人に聞けばいい。そう決まっている。
ある日、三丁目の浅井キヨ(八十六)あてに転居届が出た。新しい住所は、市の反対側にある施設。届け出たのは、同じ世帯の嫁だった。
玄関に出た嫁は、静かに言った。「義母は、先週から施設です」。その背中の向こう、廊下の奥に、キヨさんが立っていた。
これは、誰も規則を破らなかった町の話です。全13章。
グロテスクな描写はありません。幽霊も怪物も出てきませ
仕事は配るだけではない。転居届が出されると、前の住所を訪ねて、本当に引っ越したかを確かめる。本人がいなければ、同じ家の人に聞けばいい。そう決まっている。
ある日、三丁目の浅井キヨ(八十六)あてに転居届が出た。新しい住所は、市の反対側にある施設。届け出たのは、同じ世帯の嫁だった。
玄関に出た嫁は、静かに言った。「義母は、先週から施設です」。その背中の向こう、廊下の奥に、キヨさんが立っていた。
これは、誰も規則を破らなかった町の話です。全13章。
グロテスクな描写はありません。幽霊も怪物も出てきませ
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