いつか返し
シバカズ
いつか返し
それは月の初め頃だった。彼は金を借りた。
借金とは、金銭を借りることであり、それに付きまとうのが利子(利息)である。
だが、ある貸主から借金をした彼には、利息を払う必要がない。
世の中には、闇金という無担保、低利子で融資すると嘘をつき、のちに違法な高金利を請求する貸金業者もいるが、彼は国に登録された正規の貸金業者から融資を受けた。
融資と聞くと何か大きなことをするため大金を借りたように聞こえるが、彼が最初に借りたのは、ほんの一万円だった。
最初は疑っていたのだ。友人の紹介で訪れた金融屋だったが、無利子でありながら貸金上限もなく、返済期限も設けないというこのサービスを——。
工面してくれた社長は、返済は
その後、一週間経っても貸主から返済催促の連絡はこなかった。
彼は再び金融屋を訪れた。
上質なスーツ一式を揃えたいので、と今度は十万円の融資を申し出た。
前回の貸金があるにも関わらず、社長はデスクから一万円札を十枚取り出した。
そして、気前よくこう言った。
「まあ、いつか返してくれればいいので」
彼が借りた十万円は、金融屋を紹介してくれた友人含め、十人の焼肉食い放題に消えた。
彼は
あなたのお陰で大きな商談がまとまりそうです。と前置きし、そのための資金があと百万円ほど必要で、と恐縮した
それだけで社長はデスクを開けて、封筒に入った札束を取り出した。
「額が大きくなってきましたけど、いつか返してくれると信じています」
そこで彼は再度確認してみた。
「もしここで一億円借りて、当分返せないと言う客がいても利子はつかないのですか?」
社長は大きく頷いた。
「いつか返してくれるなら……」
彼はここで疑問に思うべきだった。
この貸金業者の儲けはどこからきているのか——。
だが、彼は百万円を手にして、学生の頃から夢だったアメリカ旅行に出かけてしまった。
二週間後、アメリカ
土産を渡すと、彼は早速ビジネスの話に移った。
アメリカの大手自動車メーカーとのタイアップ(提携)が決定しました、と嘘の商談成立の事後報告をし、そこで——と切り出した。
彼によると相手企業の商社マンに見栄を張って、うちの社長はアメリカの高級車に乗っていると言ったという。
その場では、車種やグレードなどは
社長は中古のアメリカ車のカタログを彼に見せ、その場で必要な額を渡してくれた。
彼の選んだ車は、中古相場でも一千万円だった。
翌月に入り、彼はため息を吐き出していた。
一千万など、下手な投資に回せば消化はあっという間だった。
ひとしきり悔やんだあと、彼は思った。
株式投資だけではなく、
そのための軍資金は最低でも一億円だ。
彼はさっそく社長の下を訪れた。
すると今回は社長の方から口を割った。
「返済の
彼は面食らい、返済はいつでもいいのでは? と問いただした。
「何度も言ったでしょう。いつか返してくださいと」
社長は笑みを浮かべたまま、貸した金額の請求書と契約書を突き出し、日付の場所を指し示した。その日付は5日だった。
そして、契約書の裏に違約金が示されていた。
その金額を見て、彼はこの貸金屋の儲けを知ったが、その日をさかいに彼の姿を見た者はいない。
社長は微笑む、彼の臓器は闇市場で高く売れた。
いつか返し 完
闇市場で取引される臓器の値段
腎臓1個 約700万〜2600万円
肝臓 約1256万〜1570万円
心臓 約950万〜1200万円
肺(片方)約1000万円
膵臓 約500万円
骨髄(1g)約200万円
小腸 約20万〜30万円
冠状動脈 約15万〜20万円
眼球(2個)約10万〜15万円
胆嚢 約9万8千〜20万円
頭蓋骨と歯 約9万6千〜15万円
膝(片方) 約10万円
足(片方) 約10万円
頭皮 約6万〜8万円
脾臓 約4万〜5万円
胃 約4万〜10万円
肩(片方) 約4万〜10万円
肘(片方) 約4万〜5万円
手(片方) 約3万〜5万円
血液 1USパイント(473ml)2万7千〜3万円
皮膚 1平方インチ(6.45平方cm)8百〜千円
※国や地域、供給源、仲介業者のマージンによって、売買価格は変動する。
※日本では1997年制定の「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」に基づき、臓器売買は厳格に禁止されている。
いつか返し シバカズ @shibakazu63
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