第十二章を公開しました。
今回は、交差点、タクシー、警備室、そして明け方の空という、互いに接点を持たない場所に差し込む光を、同じ時間の層として重ねています。
信号の切り替わる間、後部座席に流れる沈黙、モニターに映る無音のフロア、巡回の足音と始発の低い振動。
どれもが別々の世界のようでいて、実際には同じ夜の呼吸の中にあり、同じ「朝へ向かう途中」に置かれています。
早川ひかり、佐久間玲奈、小野寺真帆。
互いを知らず、物語としては交差しないまま、それぞれの持ち場で、夜と朝の境目の光を受け取っています。
まだ名前を与えられない色、まだ意味づけされない時間、写真にも、記事にも、映像にもなる前の層。
この章は、出来事ではなく、「出来事になる直前の光」そのものに立ち会う感覚を、そのまま残すことを目指しています。
言葉と沈黙のあいだ、夜と朝のあいだ、記録される前とされなかったもののあいだ。
その境界に覚えがある方は、今回もまた、同じ高さの空気の中で、そっと読み進めていただけたら嬉しいです。