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【第3回:裏フレンズ】第1章 -1-(2)|ウォークマンを置いていった理由

 こんにちは。澄野あさひです。
 裏フレンズを書くのが楽しくて仕方ない今日この頃です。

 しかし、あくまでここに書いてあることは〝裏〟話なので、覚えなくていいし、そこまで読み取らないといけないわけでもありませんからね。ただの自己満足ですから。
 「へ〜、あの一文にこんな意図があったんだ〜」と思っていただけたら私はニヤリとしています。本編ともども、身構えずに読んでいただけたらうれしいです。

 もし本編を読んでいて、「ここはどういう意味(意図)だろう?」と疑問に感じた際は、この裏フレンズがお役に立てればなと思っています。

 では今回は第1章 -1-(2)について一緒に見ていきましょう。


***


 前話に引き続き、入学式当日の朝のシーンですね。
 慣れない制服(学ラン)を着て、似合わないなと苦笑する感じは、皆さま経験があるのではないでしょうか。そんな初々しい門出の描写から始まります。

 しかしここで主人公は、新生活に一切わくわくしていない様子。「友達ができるかな」というような本来抱きがちな不安や希望ではなく、はなから諦めていそうな、影に隠れる気満々といった心情です。

 前話にも《楽しみ、なんて思えたらいいのに。》や《六年前は、どうだったっけ。あまり記憶にないけれど、ボロボロのランドセルが恥ずかしくて背を丸めていたのを覚えている。だから————》などという心理が描かれていて、何やら小学生時代のトラウマを抱えていそうだぞ?と読める部分です。


 さて、そんな朝の静寂を破る音が突如聞こえてきます。拓海の登場です。
 これまで主人公が一人で淡々と過ごしていた空間に、パッと光が差し込むような演出をしました。

 ここでのポイントは《ガチャ、と玄関の鍵が開く音がした。》です。
 え?なんで鍵開けれるの?って思ってほしい。そして家主である主人公も全く驚いていない。普通に受け入れてるやないですか。

 つまりは、それほどまでに当たり前に出入りする間柄ということです。
 当たり前に合鍵を渡してるし、拓海はインターホンも鳴らさず連絡もなしに平気で突然やってくる。要は家族同然の幼馴染というだけなのですが。

 ここも私の「なるべく説明したくない!」というこだわりが出てまして。なんていうか、ここで「こいつは僕の幼馴染の拓海。家族同然の仲で、いつも勝手に家に上がり込んできては、僕を引っ張っていく明るく強引なやつだ。」みたいな説明を入れると寒くないですか?だから絶対にしたくない!行動と反応で見せたい!という意地です。

 そしてこの拓海が主人公にとってどんな存在なのかというのも大事なポイント。
 《同じように似合わない制服に身を包んでいることに少しだけ安心した。》から見て取れるように、拓海は敵ではなく「安心できる存在」。突然家にやってきても一切嫌がっていない様子からもお分かりいただけるかなと思っています。

 ここで登場する《ガラケー》も前回のウォークマン同様、時代感を出すためのアイテムです。《ようやく携帯することに慣れてきた》というのは買ったばかりということですね。中1ですから。春休み中に買ったんでしょう。携帯デビューしたてです。

 この物語は約20年前くらいを想定しています。2000年代後半ですね。そこから現在へ向かっていくお話です。主人公の人生をまるっと20年描きます。なので中学生時代はまだガラケーだし、音楽サブスクなんてないからCDをウォークマンに取り込んで聴くし、そういう時代。懐かしい。令和の子に伝わるかな……。

 ちなみに裏設定としては2007年とはっきり決めているのですが、これは作品内に一切出さないことにしています。西暦を出すと、震災やコロナや何やら現実の出来事を無視できなくなるので、そこは都合よくスルーさせてもらってます。
 でも曜日などの矛盾が出ないように、実際にカレンダーを見ながらエピソードを書き進めました。たぶん、大丈夫、なはず……。もしかすると、「どうせ作品内に出さないからいいや!」と適当にした部分もあるかも……?(震え)
 答え合わせはしないでください。笑


 そして!
 《ウォークマンは——充電していなかった。今日は、必要ないか。ベッドの上で置き去りになっているそれにしばしの別れを告げて、拓海と一緒に家を出た。》

 ここ、意図が詰まっていまして。
 実はこのウォークマン、単なる「時代感を出すためのアイテム」に終始しないのです。

 プロローグにもあったように、彼にとって音楽=心の拠り所です。一人孤独な時間も、眠れない夜も、ずっと音楽を聴いていた。
 そんなお守りのような《ウォークマン》を、この日は持って行かなかった。充電していなかったという理由づけはあれど、彼は《今日は、必要ないか。》と思っている。

 これは彼なりに、今日という日に一抹の希望を抱いているんですね。

 あんなに気だるそうに淡々と朝の支度をしていたのに、心のどこかでは、本人も気づいていないほど微かに新生活に期待している。東京に引っ越してきて新たな環境で始まる中学校生活が、過去とは違うものになるという期待を無意識に持っている。

 だからウォークマンを置いていった。
 それもただ放置したわけではなく、《しばしの別れを告げて》。ここに彼の意志を感じませんか?
 もちろん実際にウォークマンに声をかけたわけではないですが、「行ってくるよ」「頑張ってくるよ」、そんな覚悟だったんじゃないかなと。

 だって彼の性格を考えると、たとえ充電が切れていても、形だけイヤホンをして周りをシャットアウトすると思うんです。けれどそれをする気がなかった。なぜなら入学式で変わりたいと思っているから。今までの自分ならしていたであろうことを手放そうとしたから。

 それなのに、やっぱり変われなかった。些細な出来事に、他人の一挙手一投足に、いちいち心をすり減らして、人の目が怖くて、教室の空気が上手く吸えない。自分はあの頃のままだった。
 そんな自己嫌悪と絶望感が、次話の行動につながっていくわけです。うーん、切ないですね。


 さて、拓海の口から何やら他の人物の名前も出てきました。
 《おかんは七海の高校に寄ってからこっち来るらしいわ。涼香が朝寝の時間やねんな。抱っこ紐で連れてくるみたいやけど。ちゃんと寝てるかな。途中で泣いたらどうする?》
 この時点ではサラッと飛ばしていただいていい箇所ではあるんですが、「拓海との間には共通の話題や人間関係もあって、なんか兄弟?もいるっぽい?高校と、抱っこ紐?ふーん、それくらいの年齢の兄弟が拓海にはいるのね」くらいに何となく感じていただけたら、後に登場する小田家へのイメージが湧きやすくなるかなという意図です。

 あとは拓海が楽しそうに喋ってる感を出したい。クールそうな主人公相手に、拓海は気にせずワイワイと関わってるぞ、という。こっちがメインかも。

 ちなみに超どうでもいいですが、七海の高校の入学式が同じ日に被ったんですね。だからおかん大変!幼い涼香を抱っこ紐で連れてまずは七海の入学式にちらっと顔出して、そのあと拓海らの中学いくで〜って話です。ここもしっかり読み取ると、七海との年齢差がわかっちゃうぞ⭐︎というおまけレベルの仕込みです。

 小田家については次回詳しく?紹介しようと思います!


***


 ということで第3回の裏フレンズでした。
 本編より多い文字量で語っちゃってるんですが大丈夫でしょうか?毎話やりますよ、これ。どうぞお付き合いくださいませ!

 ではまた次回お会いしましょう。
 カクヨムでの連載は明日が最終回、完結です!よろしくお願いします!



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