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車の話

春みたいな二月の週末、散歩中にこんな車に出会い、思わず足を止めました。

私は車のことは詳しくないし、ふだん特別な関心があるわけでもありませが、鮮やかなミントグリーンと黒のツートンカラーには惹かれました。
それに、この形、まるで地面に吸いつくような車体に惹かれ、思わず一周して眺め、撮影してしまいました。

車に詳しい人に写真を見せたら、この車はアメリカを代表するスポーツカー「フォード・マスタング」をベースに、持ち主がこだわり抜いて作り上げた特別な一台、ということです。

ボンネットには大胆な開口部があり、黒いワイドフェンダーも装着。随所にカスタムパーツが施されています。

そして、その低さ。地面にぴたりと張り付いているように見えるのは、「エアサス(空気のバネ)」を使っているからだそうです。
停車中は空気を抜いてボディを沈ませ、走行時にはスイッチひとつで車高を上げる。段差も問題なく走れるとのこと。
車高を上げなければタイヤが動かせないため、簡単には運転して逃げられません。レッカー車も入り込む隙間がなく、物理的に持ち去るのも困難。

この車は持ち主にとって、「誰にも触れさせない、自分だけの聖域」みたいですね。
世の中には、何かに凝った人がいますが、そんなひとりの美意識と愛と工夫が詰まった一台に逢えて、楽しい気分でした。

さて、執筆の話もしなくては。
只今「エドガー・フィルモア」の話が進行中です。彼がピアニストを迎えに来た時に乗っていたのは、漆黒のアストンマーティン・ヴァンキッシュです。「透明な雨粒がボディに散り、曇天の下で鈍く光を返すその姿は、まるで夜の獣のようだった。エンジン音は低く、深く、まるで遠い記憶のうめき声のように響いた」と表現しました。
この車種を選ぶのには、時間がかかりました。

この先で、彼が今は、別の車に乗っていることがわかりますよ。
というわけで、私の小説の宣伝になりました。どうぞ、よろしく。

4件のコメント

  • 漆黒のアストンマーティン・ヴァンキッシュの描写にはわくわくしました。書き手さんがぴったりとその情景に張り付いていて、今から物語が始まる! という感じがあって。
  • すてきな感想を書いてくださって、感激です。でも、それは朝吹さんの想像力によるもので、私にそんな書く力があるとは思えません。

    でも、思いだしたことですが、昔、フランス映画を観にいった時、雨の石畳とかが映り、男性の低い独白が聞こえてくると、「ああ、映画が始まる」なんてセンセーションが走り、座り直したりしたものです。懐かしいなぁ。
  • こんにちは。ミントグリーンとブラックのツヤのある車体になまめかしい曲線が美しい車ですね。こんな車とすれ違ったら、思わず足を止めそうです。
    さて、拙作『セレナーデ』になんとも格調高いレビューコメントを書いて下さり、ありがとうございました。作品以上に深く、胸を打つ文章で、読みながらうなりました。
  • 佐藤宇佳子さま、こんにちは。佐藤さまが音楽にとても詳しい方なので、「セレナーデ」というタイトルに惹かれて、読んでみました。最初に「ねっとりと糸を引くようなセレナーデ」と書いてあったので、ええっ。「セレナーデ」ってそういう音楽だったのかと思ったら、途中でわかりました。主役が〇〇でした。すばらしく妖艶な文章が書ける方です!
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