お世話になっております。山龍です。
『江戸日本橋 薬種屋〈桔梗屋〉の診立て』
第七話「安息香(アンソクコウ)、亡人(ボウジン)匣(ハコ)開く」第二幕を、本日11時に公開しました。
https://kakuyomu.jp/works/822139845582961509開幕では、晩秋の日本橋にある蝋燭問屋・松葉屋で、奇妙な出来事が起こりました。
亡くなった主人の薬匣が、日暮れになると開く。
そこには甘く重い安息香の香りが残り、翌朝には銭や薬包が消えている。
「亡くなった旦那が、まだ薬を届けに出ている」
そんな噂が囁かれるなか、与四郎と弥吉は、匣に残されたものをひとつずつ確かめ始めます。
今回の第二幕では、薬匣そのものから少し離れ、松葉屋で暮らす「人」の側へ目を向けます。
亡き主人を知る者。
店を預かる者。
そして、今もその家で働く者。
同じ出来事を見ていても、それぞれが知っていること、口にできることは同じではありません。
帳面に残っているもの。
帳面には残っていないもの。
人から人へ伝えられた言葉。
そして、亡くなった後にも消えずに残る約束。
第七話では、そうした「書かれたもの」と「書かれなかったもの」が、少しずつ重みになっていきます。
第六話「牛膝、土俵に胸沈む」で、与四郎は正しい診立てを告げるだけでは、人の心まで動かせないことに直面しました。
今回の一件では、その経験が、与四郎と弥吉の仕事の進め方にも少しずつ表れ始めます。
誰が悪いのかを決めること。
何が起きたのかを確かめること。
そして、その後をどう収めるのか。
それらは、必ずしも同じ仕事ではありません。
第二幕では、その入口までを描いています。
なお、次回の【木曜の薬包】は、
8月27日㈭18時
に「背に問う」を公開予定です。
本編では見えにくい場所から、今回の一件に関わる人物の姿を描く短い幕間となります。
そして第三幕は、
8月30日㈰11時
に公開予定です。
夜ごと開く薬匣。
残る安息香の香り。
消えていく銭と薬包。
亡き主人が残したものは、本当に「香り」だけなのか。
第七話も、いよいよ物語の奥へと入っていきます。
引き続き、『桔梗屋』をよろしくお願い申し上げます。
噂は騒がしい。
薬は黙って効く――