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カクヨムコンにもう一作品参加しました。フォロー等ありがとうございます。

「これをもちまして、終了とさせていただきます」はもうでき上がっておりまして、加筆修正をしながら公開しているところであります。

怒られない範囲で、さっさと全部投稿してしまおうと、こっそり思っています。ギリギリまで、ジャンルを迷いました。何が引っかかるかというと「溺愛」、醜くゆがんだ形の王族サイドの溺愛?はあるのですが、求められている「恋愛・溺愛」はこれではないだろうと。ヒロイン側の人間は、じれじれというか、いやでも、家族愛や見守り愛はあるか? などなど言い訳をしつつ、最終的に、まあいいかとこのジャンルにしました。

考えすぎてよく分からなくなりました。

早速のフォローやお☆様、♡ありがとうございます。期待の意味を込めてぽちっとしてくれたのだろうと、普段使っているパソコンの前で90度の礼をいたしました。

お礼にSSと思ったのですが、まだ中盤でもなく、その代わりと言っては何ですが「代わりと言っては何ですが」というタイトルで、超絶テンプレの単話(2000文字程度)をひらめいたので笑、もしよかったらご覧ください。

*****


ーー代わりと言っては何ですがーー



 王宮大舞踏会の夜は、いつだって残酷だ。



 光は正しい位置に立つ者だけを照らし、そうでない者は影の中で囁かれる。

 そして今夜、その影はひとりの令嬢を縁取っていた。

 セラフィーナ・アルノー。

 ほんの数か月前まで、彼女は王太子の正式な婚約者だった。今、王太子の隣に立つのは別の令嬢。淡い色のドレスに身を包み、勝者の微笑みを浮かべている。



「……アルノー公爵令嬢の代わり、ですって」

「ええ。もう決まったことらしいわ」



 ホールの囁きに、セラフィーナは振り向かない。
 

 やがて、楽団の音が完全に止む。大広間の空気が張り詰めた。


 ――ファーストダンスの時間だ。

 本来であれば、王太子が前に進み、王族席へ深く礼を捧げる。それが「合図のひとつ」だった。そして、国王が立ち上がり、王妃が扇を閉じる。

 その一連の動きが揃った瞬間、最後の合図と共に、楽団長は杖を掲げ、最初の一音が鳴る、はずだった。


 だが。王太子は、新しい相手の手を取り、当然のように前へ進み出ただけだった。

 礼がない。王族席への視線もなく、誰に合図を送るべきかも分かっていない。

 不思議そうな顔をした王太子の動きが、わずかに止まる。


「……?」

 隣の男爵令嬢、リュシエンヌ・ベルノワは、笑顔のまま固まっていた。


「ねえ、殿下。どうすればいいの? 今は、進むの? 止まるの?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 楽団長は、杖を下ろせずにいる。重鎮たちは互いに視線を交わし、外交使節の表情が、ゆっくりと冷えていく。


「……始めないのか?」

「まさか、合図を知らないとか」

「そんなことはあるまい、晴れの舞台だぞ。教わっているに決まっている」



 誰かの、抑えた声。

 王太子は小さく咳払いをし、視線を泳がせた。




「ふふ、王太子殿下は、伝統の儀礼をご存じないようですね」

 その時、鈴の音のように澄んだ声が響く。ざわめきの中心で、セラフィーナが、一歩、前へ出た。



「王太子殿下の代わりと言っては何ですが――合図を出せる別の方を、私、存じておりますの」

「は? 何を言っている!! 王太子である私の代わりに合図など。いいから早く音楽を奏でろ!」

 それでもなお楽団長は、杖を下ろせずにいる。

 彼女は完璧な角度で一礼し、視線は王太子を越え、玉座の近くへと向けられる。その人物へと差し出された手。

 それをほほ笑みながら見つめていたのは、王弟アルベリクだった。

 ゆっくりとした仕草でホールに降り立つとセラフィーナをエスコートしながら前に進み、王族席へ深く礼を捧げる。


 息を呑む音が、聞こえるほど静まりかえった。



 アルベリクは前に出る。国王が頷き立ち上がる、王妃が静かに扇を閉じて微笑む。

 全ての合図が整ったあと、アルベリクはかかとを一つ、床に鳴らす。その音を合図に、楽団長の杖が振り下ろされ、今度こそ、音楽が流れ出す。


 セラフィーナは誇らしげな表情を見せない。

 ただ淡々と、アルベリクとともに舞踏会の中心へ進む。その一挙手一投足は、長年“王妃となる者”として叩き込まれたものだった。



 背後で、王太子は完全に取り残されていた。隣のリュシエンヌは、笑顔を保とうとしたが周りの失笑に気付き、視線の置き場を失い、ようやく自分が「場違い」なのだと悟る。



 この場に必要なのは、見せつける恋ではない。役目だ。


 音楽が終わる。拍手は、自然とセラフィーナとアルベリクへ集まった。それを受けて、国王が立ち上がる。


 この舞踏会は、華やかな社交の場でも、王太子の新しい相手のお披露目でもない。選別の場、そして、裁きの場でもある。




「王太子よ。そなたの体たらくには、心底がっかりしている」

 低く、重い声が大広間を打った。

 王太子は、びくりと肩を震わせた。



「セラフィーナ・アルノーを軽んじ、己の判断で“代わり”を選んだあの日。その時点で、もはや猶予は終わっていたのだ。彼女の支えを失って、ここまで無様になるとはな。いや、今宵の儀礼だけの話ではない」

 ざわめきが、はっきりと広がる。

 王の視線が、容赦なく王太子を貫いた。



「王位継承者としての務めを忘れ、王家の名を用いた不正、公金の横領、特定貴族との癒着、そして虚偽の報告――もはや、見過ごせぬ」


 会場が、完全に凍りついた。



「よってここに、王太子の位を剥奪する」

 息を呑む音が、遅れて走る。



「次代の王位継承者は、王弟アルベリクと定める」

 王太子の顔から、血の気が一気に引いた。



 腕に縋っていたリュシエンヌ・ベルノワは、ようやく事態を理解したのか、言葉もなく崩れ落ちる。

 セラフィーナは、ただ一度だけ王太子を見た。そこにあったのは、憐れみでも怒りでもない。完全な無関心。

 そして、彼女は静かに振り返る。王弟――いや、次代の王アルベリクへ。深く、一礼。

 アルベリクは一瞬だけ、誰にも気づかれぬほど僅かに目を細めた。



「セラフィーナ。やはり、あなたも王のご意向をご存じだったのですね」

「ええ。存じておりました」


 その声は、あくまで柔らかく、静かだ。



「知っていたことを黙っていた代わりと言っては何ですが、王妃の務めは、きちんと果たしますわ」

「私は、あなたが王妃である未来以外を考えたことがありません。私にとっても、あなたの代わりなど、最初からいない」



 アルベリクの指先が、わずかに彼女の手に触れる。

 
 光は、正しい位置に戻った。


 ――最初から、次代の王妃の“代わり”など、必要なかったのだから。


 舞踏会は、何事もなかったかのように続いていくのであった。



※引き続き応援よろしくお願いします。

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