この度「それでは、ひとつだけ頂戴いたします」が、書籍(5/5)になります! 続けて書籍化できたのも、皆さまのおかげです!!イラストは、みなうさ様に、艶やかに可愛らしく描いていただきました。感動です。
ベリーズファンタジー(スターツ出版)様
amazon→https://x.gd/lxsS5
恋愛要素はwebよりも丁寧になっており、番外編、トト新作もあります。
そこで、今回も感謝の気持ちを込めて、書籍化記念SSを発売日5月5日まで毎日投稿します。楽しんでいただけたら嬉しいです。これからもどうぞ、拙作をよろしくお願いいたします。
以下、SSに入れなかった分です。良かったら是非(5月5日追記)
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絵本『トトの家出』(イメージとしては『トトの挑戦』より前に作られた絵本)
ミミはやさしくて、みんなに好かれているトトの妹です。
ある日のこと。坂道で、おばあさんがリンゴを落としてしまいました。ミミはすぐに駆け寄って、リンゴを拾い、代わりにかごを持ってあげます。
その様子を見ていた大人たちは、口々に言いました。
「ミミはやさしい子だね」
「まるでトトのお姉さんみたいだな」
「ミミがいれば安心ね」
お母さんまで、にこにこしながら言いました。その言葉を聞いていたトトは、とうとう叫びました。
「みんな、大きらいだ!」
そして、そのまま駆け出しました。下を向いて、石をけりながら歩いていると、トトは一枚の紙を見つけました。それは宝の地図でした。
「やった! これでお金持ちだ! 蜂蜜も食べ放題!」
トトは家に帰ると、かばんに、大切にしている格好いい石と蜂蜜のびんを詰めました。そして机の上に、『さがさないでください』と書いた紙を置きます。
地図をぎゅっとにぎりしめて、トトは森の奥へと進んでいきました。森はしずかで、少しこわい場所です。草ががさがさとゆれ、木の葉がざわざわと音を立てます。
やがて雨まで降ってきて、トトは走って木の下へ行き、雨やどりをしました。
蜂蜜を食べようと、鞄を開けると、瓶がいつの間にか割れて中身がこぼれています。きっと走ったとき瓶に石がぶつかったのでしょう。トトはとうとうぽろぽろと涙をこぼしました。
雨が上がり、夕日が見えた頃、トトは涙を拭って、また歩きだしました。
そして、やっと地図のしるしの場所にたどり着きました。その場所を見たトトは、目をまるくしました。だって、そこは、トトの家の裏だったのです。
「あれ? なんで?」
トトは木の陰に隠れて、そっと家を見ました。窓から灯りが見えます。
「二人とも僕のこと忘れてご飯食べているのかな」
おなかからぐーっと音が鳴ります。そのとき、後ろから声がしました。
「見つけたぞ、トト!」
ふり返ると、狐さんが立っていました。狐さんは、なぜか、いつでもトトを見つけます。
「なんでまた、家出なんか。ん?」
狐さんはトトの手を見て言いました。
「それ、何を持っているんだ?」
トトが宝の地図を見せると、狐さんはくすっと笑いました。
「これは、おじさんが作った宝の地図なんだよ。お前たちの遊び道具にしようと思ってな。落としたと思ったがトトが拾ったのか」
「宝物、ないんだ……」
探さないでって手紙を置いたことを思い出したトトは落ち込みました。
「さあ、帰るぞ。ミミも、お母さんも、ご飯を食べないで待っている。心配していたんだ」
「また迷惑かけてって呆れてない? ひどいこと言っちゃったし」
「謝ったらいいだろ?」
「でも、帰らない方がいいかも。僕がいない方が静かでしょう」
「静かすぎて、寂しいぞ。だから『探さないで』って言ってもこれからも探すからな」
トトは家のほうを見ました。
「謝るとき手を握っていてくれる?」
「もちろんだ」
窓からは、あたたかい光がもれています。その光は、まるで宝物みたいにピカピカと、かがやいて見えました。
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