おはようございます。
今日も神話を探っています。
実は今年は出雲に行きまして、コトシロヌシ(事代主、恵比寿様)の神社が、とても面白かったんです。そして、古事記に合点がいった、個人的な発見もありました。
事代主の神社は、三保神社です。島根県の三保岬にあります。
三保造り、という勇壮で剛健な造りで、ミホツヒメとコトシロヌシを対等に並列でお祀りするように、本殿が2個、並んでいるんですね。かっこいい。戦艦か空母みたい。
事代主といえば、古事記の国譲りで、真っ先に降伏した神様。戦いもせずに、謎の儀式をして、さっさと国譲りに合意しちゃって、交渉を終わりにした。
「腰抜けか!」って思ってました。ごめんなさい。違うんですね。
現地に行くと感じるんですよ。「この人たち、強い!」って感じが。
簡単に屈服する人じゃない。でも、無駄に戦う馬鹿でもない。
コトシロヌシはオオクニヌシの息子なので、出雲系ですが、ミホツヒメは土着神ですね、この感じは。だって一歩も譲ってないもん。神として、立場を。
この三保岬では、オオクニヌシも外来種なんです。本家はミホツヒメ。ミホツヒメとオオクニヌシが同盟した証のアイコンがコトシロヌシですね。
ミホツヒメは多分、荒ぶる海の民です。祭りがそれを示しています。荒いんですよ。船に乗って水をかけあうとか、ぶつかるとか、一年禊とか。
三保神社の本殿の前には相撲の土俵がある。というか、もう、拝殿が土俵です。戦いを神格化しているんです。儀式だけやるんじゃない。戦いを前提としている。
一方で、とても賢い。海の民はみんなそうです。機動力が高いから情報力も高い。大和朝廷が攻めてくることなんて、当然とっくに知っている。戦えばどうなるかもわかっている。オオクニヌシにそこまで義理立てする理由もない。さっさと手打ちにするに決まってる。賢いんです。
だから、コトシロヌシは恵比寿と習合されて、七福神でも一番賢い知恵の神と呼ばれます。エビスビールのあの姿です。
さて、大和朝廷からフツヌシとタケミカズチが来て交渉を迫ります。オオクニヌシは「自分一人では決められないから事代主に訊いてくれ」と言います。この辺も、ミホツヒメ族とオオクニヌシ族の力関係を示しているようで面白い。同盟であって服属じゃない。
三保のコトシロヌシは、さっさと降伏します。
抵抗したのはタケミナカタですね。でもタケミカズチに敗れます。
このタケミナカタだけど、実は、創作じゃないかという疑惑があります。
だってタケミナカタ神社って、出雲に無いんですよ。
あるのは諏訪。
諏訪まで逃げた、ってなってるからそうなんだろうけど、そもそも出雲に無いって、変じゃない?
つまりこれは、タケミナカタは「大和朝廷に逆らう人々」のアイコンであって、出雲地方のタケミナカタ勢力は、その一部だったに過ぎない、という解釈になります。
こういう事を考えると、どうやら、国譲りは三保族と大国主族が大和朝廷と交渉の末、出雲が立場を保つことを条件に和睦した、と見ることができます。
三保はもともと漁業をやってますからね。海での活動を制限されなければ、それでいいんです。
こうしてもろもろ見ていくと、「コトシロヌシ、かっこいい!」って思うようになりました。強いのに戦わず、賢く利益を取った。
そのうえで古事記を読むと、「ん?しかしこれ、何やってんの?」って思う記述があるんですね。
そこを掘り下げています。
面白かったです。
なるほどねー。と思いました。
お暇なときにでも、目を通して頂けると嬉しいです。