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どうか……どうか、お許しください……

 それを聞いた瞬間、ネルは考えるより先に身体を投げ出していた。
 床に膝をつき、額が石に当たる。冷たい。硬い。逃げ場がない感触。

「……お許しください……」

 声が震え、言葉が擦れる。
 プライドも、立場も、すべて切り捨てた土下座だった。

「どうか……どうか、お許しください……」

 許し。
 救済。
 そんな言葉が、この男に通じないことを、彼女は知っていた。
 それでも、口にせずにはいられなかったのだ。

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