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うなだれるエメラルダ

「――エメラルダの国家反逆を認め、騎士の資格をはく奪する」

 年老いた裁判官は、書類から視線を上げることすらせず、淡々と判決文を読み上げた。
 声は平坦で、抑揚も感情もなにもない。
 それは判断というより、ただの事務処理にすぎなかった。

 目の前に立たされているのは、手かせをはめられ、うなだれるエメラルダの姿である。
 黄金色の髪は乱れ、頬には疲労の色が濃く浮かんでいた。
 だが、膝は折れていない。
 自分の足で、確かに立っている。
 それだけが、最後に残された騎士としての矜持だった。

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