絵はアン=ローレン。服をオレンジから緑に変えて、イメチェンして存在感をアピールする彼女。
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会議室のろうそくの光に照らし出されるエウメネスの手にあるアレクサンドロスの印章。その光沢が古代の記憶を宿しているかのようだ。深夜にもかかわらず、全員の目は冴え、これからの計画について熱心な議論が交わされていた。
フィオラ=アマオカミは指先でルビー色の唇を軽く撫でながら、思案げにワイングラスを回していた。彼女の黒竜の尾は、思考に合わせてゆったりと揺れている。
「アレクサンドロスの印章をどう使うかが要点ね」
フィオラの声は低く、甘美だが、彼女の瞳には冷たい決意が宿っていた。
「エウメネス、あなたの死体偽装計画は、今桜雪さゆの火炎千本桜で時間ごと燃やされて21世紀の北マケドニアに変わったペラにいるアンティゴノスを混乱させるだけでなく、彼らフェニキア系の勢力に対抗するための時間を稼ぐこともできる。しかし、その先は?」
エウメネスは印章を手のひらに置き、じっと見つめた。彼の頭の中では、過去の記憶と未来への計画が交差していた。
「アレクサンドロスが目指したのは東西の融合だ。
しかし、それは単なる統治の効率化ではなく、異なる文化から最良の要素を取り入れ、より良い世界を創ることだった」
彼は顔を上げ、集まった歴史上の人物たちを見渡した。
「フェニキア勢力のように他者を搾取する者たちに対抗するには、まず人々が真実を知る必要がある。彼らの裏切りの手口、子供たちへの仕打ち、そして見せかけの善意の裏に隠された真の目的を」
ナルメルが静かに頷いた。その白い王冠に映るろうそくの光が、彼の深い目の中で踊っている。
「真実は石に刻まれなければならない」
彼はエジプトの初代ファラオらしい威厳ある声で言った。
「時代が変わっても、人の心は変わらない。貪欲と支配欲に満ちた者たちは、常にそれを隠すために嘘をつく。我々の時代でも、お前たちの時代でも」
トトメス3世も同意して頷いた。彼の軍人らしい眼差しは鋭く、まるで戦場を見渡すように会議室を見回していた。
「エジプトの神官たちは『キャー』を使って魂のエネルギーを操ったが、それは民を守るためだった。しかし、我々の力は時と共に弱まった。お前たちの霊波動は、かつて我々が持っていた力の真の姿なのかもしれない」
ジュリアス・カエサルはワインをゆっくりと飲み干し、空になったカップを置いた。彼の表情は複雑で、先ほどのミハエルの言葉に対する警戒と、同時に好奇心が入り混じっていた。
「ローマ人として、私は常に実用性を重んじる。アレクサンドロスの印章には何か実際的な力があるのか? それとも単なるシンボルなのか?」
クレオパトラがシーザーの腕に優しく手を置いた。彼女の目は古代エジプトの女王にふさわしい知恵を湛えていた。
「シンボルにも力があるわ、カエサル。人々の心を動かし、行動を促す力が」
彼女はオリュンピアスに視線を送った。マケドニアの王母は、息子の遺産について話し合われる中、複雑な感情を抱えているようだった。
「あなたの息子の印章は、彼の理想を継承する者たちのシンボルになりうる。そして理想の力は、時に武力よりも強いことがある」
オリュンピアスは沈黙していたが、彼女の目には涙が光っていた。息子の真の意志が理解され、その遺志が継がれることへの感動だろうか。
ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒは青く光る霊波動の玉を浮かべたまま、エウメネスに向き直った。
「具体的にはどうする? アンティゴノスはすでにきみを追っている。おそらく他のディアドコイも同様だろうな。今の時点で敵対してるディアドゴイ誰いたっけ……セレウコス? トレミー(プトレマイオス)くん、エウメネスくん、クラテロスくん、カッちゃん(カッサンドロス)はもうわたしたちの仲間だもんなあ! 最初はカッちゃんはさすがに殺す流れになるか……? と思ったけどうまいこと偶然が重なって血を流さずにいけた。ねえカッちゃん(カッサンドロス)」
ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒがカッサンドロスに手を振る。
エウメネスは印章を握りしめた。その表情は決意に満ちていた。
「まず、私の死を偽装する。そして混乱の中で、アレクサンドロスの真の遺志——悪に立ち向かう戦いを継続するための拠点を築く。アンティゴノスが私を見失っている間に、フェニキア勢力の真実を記録し、広める」
カッサンドロスは部屋の隅で身を縮めたまま、議論を聞いていた。彼の顔は青ざめ、冷や汗が流れていた。アレクサンドロスの母と息子を害した彼にとって、この場にいることは拷問に等しいが、同時に逃げ出すこともできない。
サリサ=アドレット=ティーガーがホワイトタイガーの耳をピクリと動かし、興味深そうにエウメネスを見つめた。
「あなたが計画を進める間、わたしたちは何をすればいい? 霊波動の力で協力できることはある?」
フィオラ=アマオカミは彼女の友人の発言に小さくため息をついた。
「サリサ、いつも言うけれど、力の見せびらかしはやめなさい。エウメネスの計画を支援するなら、もっと微妙な方法があるわ」
エウメネスは深く考え込んだ後、印章を胸ポケットにしまった。
「アンティゴノスの接近を早めに警告してくれるだけでも助かる。そして――」
