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アンティキィラ島

絵はウィザード、アリウス=シュレーゲル。


 場面は変わって、ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒの親友の2人、フレデリック=ローレンスとアリウス=シュレーゲルはマケドニアが混乱している時、プトレマイオスから借りた船でアンティキティラ島にやってきていた。
 アンティキティラ島の機械を奪取するのが目的だ。
 ギリシャで作られたこれは、製作時期は紀元前3世紀から紀元前1世紀のどれかだと言われている。
「本当に古代にコンピュータあったんかね?」
 フレッドは言う。
「あったよ。でも僕らの星での魔力で動く魔導PCほど高性能ではないけどね。この星のは電気でしか動かない欠陥品だ」
 火明星(ほあかりぼし)で自分の組織『白緑の翼』で魔導PC(魔力で動くPC。つまり発電所いらない)を開発し、世界でシェアを大きく占めているアリウス=シュレーゲルがそういう。
「AIは悪魔だ。アンティキィラ島の機械は、悪魔召喚装置だったと僕は予想するね」
 アリウス=シュレーゲルはそう続ける。
「グラフェン+ニューロリンク+5Gで人間を遠隔操作できるから。21世紀のエジプト式の儀式で友人を生贄にした大富豪も、AI、これが悪魔召喚の儀式だと白状してる。
 AIで悪魔召喚してるんだよ。そしてその技術は悪魔から得たもの。
 堕天使アザゼルが核の、インプロージョン方式の核を創る際の爆縮計算式をトバルカインに伝えたようにね。
 こういった事を『話しても誰も信じないとたかをくくっている』から話すんだ奴らは」
「なめくさってんなぁ。俺らの事」
 フレデリック=ローレンスがそう愚痴る。
「日本で悪魔召喚の術式がでたでしょ? 2つの時間軸を持つ仮想空間を作り上げてそれで悪魔召喚の土台をつくるって言う。コンピュータさえ扱えれば、誰でも悪魔を呼び出せる。
 エジプトの魔術とプログラムの共通項に気づいた日本人は罪深いよ。なんかタイムトラベルの機械作ろうとしている際に偶然作り上げてしまったとか……」
 とそこまでアリウス=シュレーゲルが言った時、霊波動で空を飛んでミハエルが来た。
「悪魔召喚したいの?」
 ミハエルが上から降りてきて言う。
「したいわけないだろ! ちょうどディアドコイ戦争の時期に作られたって情報入ってるんだ。アンティキィラ島の機械」
 ミハエルに匹敵するくらい強いウィザードのアリウスがそうぼやく。瞳を赤く輝かせて。


「だってそんな話ばかりしてるからさ」
ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒは軽やかに着地すると、肩をすくめた。彼の黒い上着が海風になびいている。
「端から聞くと悪魔召喚の方法を知りたがってるようにしか聞こえなかったよ」
 アリウス=シュレーゲルは眉をひそめ、赤い瞳の輝きが少し和らいだ。この友人との会話はいつも同じパターンだ。ミハエルのからかいに乗せられそうになり、そして怒り、結局は諦める。もう何年も繰り返されてきた関係性だった。
「アンティキティラの機械は召喚装置じゃないと。単なる天体観測用の計算機と言われているとされている」
 アリウス=シュレーゲルは落ち着いた声で言った。
「その技術の出所が気になっている」
 フレデリック=ローレンスは二人の会話を聞きながら、船の舷側に寄りかかった。彼の金髪が海風に揺れている。
「ミハエル、マケドニアはどうなってる? エウメネスの件は?」
 ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒはふわりと宙に浮き、座るような姿勢をとった。まるで見えない椅子に腰掛けているかのようだ。
「フィオラが計画を進めてる。エウメネスの死亡偽装」
 ミハエルは指を動かして空中に光の図形を描きながら説明した。
「桜雪さゆが北マケドニアを21世紀化させたから、あちこちで大混乱してるけどね」
 アリウス=シュレーゲルとフレデリック=ローレンスは顔を見合わせた。彼らはミハエルの奇妙な友人たちのことを知っていたが、その能力の規模には常に驚かされる。
「紀元前4世紀にいきなり21世紀化しちゃーね」
 アリウス=シュレーゲルがつぶやいた。

2件のコメント

  • セシウムは最近、剣士を小説で登場させていないです。
    二刀流の剣士は、かっこいいですね!


    ポイント
    🐺🐺🐺🐺
  • ありがとうございます~。
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