皆様、こんばんは!
本日ついに、第二回Uー24杯の選考結果が発表されましたね!
公式ページ(
https://kakuyomu.jp/info/entry/u-24_2025_result)
ついにこの日がやってきたかと、選考委員の一人としては嬉しい限りです。なんといっても選考が始まった十月の頃から「早くこの作品のことを世に知らしめたい!」と強く思っていたので、これでようやくお披露目の時が来たことでホッとしました。
公式ページにもありますが、今回選考委員として選ばせていただいたのは以下の三作です。
(大賞)
「頭の中でレディは殺された」(著:華矢さん)
(
https://kakuyomu.jp/works/822139836243533601)
(優秀賞)
「会津稔を殺したのは私です」(著:天野純一さん)
(
https://kakuyomu.jp/works/7667601419899672674)
「流浪少女と非行青年のオークワードライフ」(著:二核さん)
(
https://kakuyomu.jp/works/16818622172488876392)
三作とも自信を持ってオススメできる傑作揃いです!! 正直、選考期間中に発見した時には度肝を抜かれました。
以下、三作品の解説です。
◇『頭の中でレディは殺された』
これに関しては選考委員としてじゃなく、「一人の読者」として毎日楽しみにしながら連載を追いかけていました。
誇張とかではなくこの作品、「そこいらの名のある賞の受賞作よりも確実に面白い」と断言できます。メフィスト賞だとか変化球を好むミステリーの賞の受賞作に通ずる雰囲気があって、むしろ「十年に一度こういう作品が出ればその賞は大成功なんじゃないか」っていう『当たり年』のレベルの面白さを持ったものでした。
とにかくもう面白いのなんのと。「主人公の頭の中にある精神世界が舞台」ということで、「特殊なシチュエーションの本格ミステリかな?」と読み始めたのですが、展開が進むごとに予想外な出来事や演出の連続で、「こう来たか!?」、「ここでこう料理する!?」と何度も舌を巻かされました。
特に面白いのが、主人公が「イマジナリー世界」というものと出会うに至った経緯。そういう「ビギニング」な過去エピソードが語られ、ホラーのような現代ファンタジーのような楽しさもあるのが意外性があって最高でした。
冒頭から登場している「イマジナリー世界の住人たち」とは具体的にどうやって知り合っていったのか、というような感じもワクワク感が凄かったし、「主人公の名前は本編では一切明かされない」という感じになっていて、なぜか(勇者)なんて呼ばれているように表記されたり。
色々な仕掛けがあって、一話一話の充実感が半端ないです。
雰囲気的には道尾秀介さんの「向日葵の咲かない夏」だとか、白井智之さんの「おやすみ人面瘡」、小林泰三さんの「アリス殺し」なんかに通ずるような「ジャンルに囚われないなんでもありのエンタメ」に属すると思います。
本当にものすごく面白いので、是非とも手に取っていただきたい作品です! カクコン期間でお忙しいかもしれないですが、余裕が出来た時には絶対に読んでみてください!!
◇『「会津稔を殺したのは私です」』
これも本当に完成度がすごく高くて、「安定の受賞」となりました。
選考に関しては「上がってきた順から作品をどんどん読んでいき、その時点での暫定順位を決めていく」という形で行っていました。
そして、十月の下旬にこの作品が出てきてから、「1位と2位は完全に不動の状態」となりました。
この作品はミステリーとしての作りが丁寧で、中盤辺りから「謎の答えは何?」と純粋に謎解きとしての興味を強くかきたて、真相を知らずにはいられない気持ちにさせてくれるのが嬉しいところでした。
そしてラストまで読んで、「おお、なるほど」となる衝撃。これは選評にも書きましたが、それまで用意されていた「作中の道具立て」の全てがこの時点で一挙に意味を持つようになっていく。その感じがまさにミステリーの喜びに直結していました。
本作はプロ作家のミステリー短編集の中の一篇として入っていても不思議でない完成度だったと言えるでしょうね。読書ブログなんかを書いてる人なんかは、「この本の中で特に面白かったのは~」なんてこの作品のことを取り上げることもあるんじゃないかな、という気もします。
今回の受賞作三篇の中で、唯一三万字ほどの短編枠の作品です。サクっと読めて大きな満足感を得られるので、是非とも手に取ってみてください!!
◇『流浪少女と非行青年のオークワードライフ』
この作品はなんといっても筆力。構成や文章が滅茶苦茶上手いので、読み始めてすぐに「あ、これすごくいい作品だ」ってぐいぐい引き込まれる感じになりました。
本当に日常の一個一個の描写がうまくて、「あ、今この瞬間に心の中のわだかまりが一つ解けたんだな」とか、「こうして料理を作ってることで、また一段階心の救いが得られてるな」とか、特に説明もされていないのに登場人物たちの心の動きが伝わってくるという。
本当に技術力の高い作品ですので、学ぶところも多いのではないかな、と思いました。
キャラクターも魅力的なので、読めば読むほどどんどん愛着が湧きます。特に「陽炎くん」っていうキャラがすごく好きでしたね。
……という感じでご紹介となりました。
そして最終候補として選んだ二作品も、かなりいい作品でしたので、良かったらこちらも注目していただければと思います。
◇「コバルトブルーの蝶化身」(著:未知推火さん)
(
https://kakuyomu.jp/works/16818792440662550450)
この作品、実はものすごく好きで、受賞作にゴリ押ししたいレベルで愛着があったんですね。
「妖精がいると植物が枯れて、謎の円ができる」というヨーロッパの方の伝承がありますが、この作品はその設定を使って恋愛小説を書いているのです。
傍にいると植物とかの生命力を奪ってしまう、という不思議な少女と主人公の少年が出会ったところで物語が始まるのですが、やはり「近づいては危険」ということで距離を置いて接することになるという。
そんな不思議な少女と日々の対面を繰り返すという、すごく綺麗な物語です。新海誠監督の絵柄とかでアニメ化したら最高にいい作品になるんじゃないかな、という。
◇「とうめいのただいま」(著:冷田かるぼさん)
(
https://kakuyomu.jp/works/822139839299190525)
これも本当に設定が最高なんです。「同居人がある日突然に透明人間になってしまっ」って、もうこうれだけで心を惹かれました。
その上で、「透明人間たちの住むコミュニティ」なんてのも存在してて、その中で透明人間たちの抱えるルールみたいなのもあるという。
二万字ほどの短編だったのですが、これはとにかく設定が面白いので長編とかで描かれていたらすごいパワーが出ていたんじゃないかな、と思っています。
……以上が、「上位五作品」に選んだ作品についての概要となります。
今回の仕事を受けた直後はかなり不安があったのですが、「読者として夢中になれるレベル」の傑作と出会えたことで、気持ちとしてすごく楽になりました。
むしろ、「こんなすごいのあったんだよ!」と人に話したい気持ちでいっぱいだったので、今日という日が来たので解放感を得られています。
とりあえず、いい作品と出会えた状態で選考委員の仕事をやり遂げられたので、「当たりの回」だったんだろうと思いますね。
そして、気づいている方もいると思われますが、「今回は三作品中の二作品がミステリー」という結果になってます(汗)。
これだけ見たら「自分の好きな分野の作品ばっか選んでるじゃねーか!」と不満を感じる方も出るかもしれません。
でも、本当に仕方なかったんです。「レディ」も「会津稔」も本当に素晴らしい出来だったので、これを外す結果は考えられませんでした。
ミステリーは基本的に「物語の最後まで面倒を見る」という前提でプロットを練り込まないと書けないので、やっぱり細部にも力が宿りやすいのかもしれません。
総評にも書いた通り、作品に対して全力を注ぎ込んで、とにかくひたすら読み手を楽しませよう、最後までしっかり書き上げようって努力をし続けた作品は、自然といいものになるんじゃないかと。その結果としてポテンシャルの高い作品が生まれやすくなり、こういう結果になったのではないかと思います。
というわけで、これが第二回のUー24杯の結果でした。
本当にみんな「読まないのは損」なレベルの名作・傑作なので、是非是非お手にとってみてください!
よろしくお願いいたします!!!