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【閲覧注意】『卵の中から現れた密室の鍵』の修正前の最終話

 修正前も読んでみたいとのご意見を複数いただきましたので、ここで後悔しようと思います。あ、後悔じゃなくて公開。後悔もしてるけど。

 「残酷描写あり」を伏線にしたいという意図であるだけに本当にえげつない内容です。閲覧にはご注意ください。





 前提:コロナに感染したコハルは、ナカジマ先生に離れまで連れていかれ隔離された。昼食に出てきたのはいつもと味が異なるお肉と、ウミガメのスープ。






〈第4話〉

 僕は閃いたトリックをコハルに伝えるため、宿舎を飛び出した。「あ、ちょっと待っ……」とイトウ先生に引き止められそうになったけど、振り切った。積もった雪をザクザクと踏みしめながら離れへと向かう。

 離れは木造の山小屋みたいな見た目をしている。でも意外と断熱性や遮音性が高くて、感染症にかかった人を隔離するのにもってこいの場所だった。

 コハル、驚いてくれるかな。あんな不可解な謎の答えを見つけたのだから、きっとびっくりしてくれるに違いない。

 扉をゆっくりと開けると、鉄のような臭いが鼻をついた。中にはベッドが置かれている。その上にはコハルがいた。



 彼女は口から血をだらだらと垂らし、「水……水……」と言いながら這いずり回っていた。 



 その横でマザーのワタナベ先生がぎょっとしたようにこちらを向いた。先生は注射器を持っていた。中には赤黒い液体が充填されている。

 彼女の脇にはナカジマ先生の首が置かれていた。顔面の筋肉がすべて弛緩し、だらんと垂れ下がっている。周囲には足や胴のようなものも転がっている。

「ホ、ホリキタ君……これはね……その……」

 ワタナベ先生が慌てて取り繕うように言う。

 僕はワタナベ先生を無視し、コハルの元へ駆け寄った。

「どうした? 何をされた?」

 コハルは困惑したように首を傾げる。

「先生からいっぱいお水をもらってるのに、ずっと喉が渇くの」

 そのとき、僕はすべてを悟った。

 コハルはコロナに感染して味覚と嗅覚に異常が起きた。食糧難に陥っていた『マグパイ』はナカジマ先生を生贄にして——視覚と味覚と嗅覚が利かないのをいいことにコハルを血抜きに利用した。血液の処分に困ったから、「水」と称して延々と血を飲ませ続けたんだ。

 ということはさっき食べた変な味のお肉も……ウミガメのスープも……。

 僕はその場で激しく嘔吐した。

【残酷描写あり】

(了)

16件のコメント

  • 拝読しました。
    個人的には全然ありですね。
    なんならこういうの大好きです(笑)
  • コメントありがとうございます!
    たしかに桜森様は好きそうな内容に思えてきました(笑)。
    ただこれを「ほのぼの日常の謎」として予告なくやると、「なんでいきなり??? 天野さん大丈夫???」となるのも無理はないという感じですね(笑)。
    ホラーを書いてみたいという思いは常にあるので、またの機会に戦慄ホラーをお届けできたらいいなと思います。
  • 周囲に受け止められる作品かどうかをご心配されているように感じましたが、拝読した限りでは、感想として特に問題はないように思います。
    おそらく、前触れのない胸糞展開であったことや、天野先生のこれまでの作品とは作風が大きく異なっていたため、読者の皆さんが驚かれただけではないでしょうか。
    さまざまな方向性を模索されること自体は、とても良いことだと思います。
  • どちらかと言うと、この終わり方の方が設定に合っていて、良い作品だと、私は思います。公開してくれてありがとうございます^^
  •  これは確かに、日常の謎パートとの関連性が読めなくてちょっと心配になっちゃうかもしれませんね笑
     とはいえ、この展開はおそらく意外性を重視していると思われるため、「残酷描写あり」以外に伏線を用意し過ぎるのも、天野さんの当初の目的とは異なる感じになるのでしょうか。

     いずれにせよ、創作表現には誰かを不快にさせる可能性が付きもので当然ですし、読者側もそれを承知で読むべきものだと(個人的には)思います。
     TPOが合っていない場合に批判されるならまだしも、Web小説サイト内でしっかりレーティングも付けて披露したのですから、あまり後悔することなく今後も様々な表現手法に挑戦し続けてほしいなぁ、などと一読者として応援しております!
  • 篠崎様、コメントありがとうございます!
    特に問題はないと言っていただきまして、僕が異常者という可能性が否定されて安堵しました(笑)。
    最初期にいただいた感想が全部「驚愕」より「困惑」が遥かに勝っている感じだったので、あまりオチとして適切ではなかったかなという。仰る通り僕の作風の問題が大きいでしょうね。僕が元々ホラーの書き手だったら「コイツやりおった」で終わるとは思うので。少しやりすぎたのかなという感じです。でも篠崎様的には問題ないと評していただき救われます。
    これからも様々な方向性の追求は変わらず頑張っていこうと思います! 励ましのお言葉、本当にありがとうございます!!
  • 高井様、コメントありがとうございます!
    こっちのほうが良かったですか(笑)。いや~小説って難しいですね(笑)。
    こちらこそいつも素敵なレビューをいただき感謝感激しております!!
  • めまいさん、コメントありがとうございます!
    「お題に答えた日常の謎パート」が存在することで最後のホラーオチの存在を隠蔽する、という隠れ蓑的な役割のつもりだったのですが、ものの見事に失敗しました(笑)。
    仰る通りで、このオチが読まれてしまうと台無しですし、「小説の外側の伏線」を売りにしているため、作中の伏線は可能な限り減らしておきたかったのです。そしたらただの唐突なグロオチに……。
    読者の自己責任、というのはXでも仰られてましたね。実際その通りだと思うのですが、作者としては気が気ではなかったです(笑)。励ましのお言葉ありがたく受け取らせていただきます。今後も実験的な執筆は惜しまず頑張りたいと思います!
  • 拝読しました。
    個人的にはどっちも好きですが、むしろここからもう一方の長閑な展開へ持っていけたことが凄いような(笑)。
  • 坂神様、コメントありがとうございます!
    どっちも好きと言っていただけてほっとしてます。第4話を消して「前提」と結末をいじった以外は案外修正した箇所はないのですが、読後感が180°変わってますよね(笑)。
    近況ノートの方のオチはめちゃくちゃ好みが分かれるので、難しいところですね……。
  • うーん、このくらいの描写なら問題ないかなぁ?
    と思うところですが、まあでも苦手な人は苦手ですかね。
    こちらの公開もありがとうございました。
  • Ash様、コメントありがとうございます!
    描写自体は仰る通り問題ないような気がするんですけど、前半の日常の謎に全く関係のない破壊オチなので、好みがハッキリ分かれるだろうなという感じですね~。
    こちらこそノートへのご訪問ありがとうございます!
  •  個人的には、これはOKというか、「こういう作風もたまには摂取しておきたい」系の作品ですね。

     本格推理は「謎解きさえ組み込めばどんな物語とも合わせられる」ってのが特徴だから、そこで残酷な系統とか絡めるのも面白いです。

     なぜ喉が渇くのか。それで「血を飲まされまくったから」の答えも色々と「この世界観ならでは」でいいと思いました。
  • 黒澤先生、コメントありがとうございます!
    普段は完成度で勝負して時々ひねくれたブッ飛び作品を上げたい自分としては嬉しいお言葉です! ただ僕が唐突にこういうことをすると「え、なんでそんなことするの……?」「メンタル大丈夫?」が先行するのも無理はない感じはしました(笑)。
    仰る通り本格推理は「小説の内容」ではなく「小説の構造」を定めているに過ぎないので、極論どんなジャンルとも複合できるのが良いところですよね。これからも色んなジャンルとの組み合わせを試行錯誤していきたいと思います!
    初めはコハルが「飲んでも飲んでも喉が渇く」という独白をする場面を冒頭辺りに挿入して「水と見せかけて血だった」という叙述トリックにしようと思っていたのですが、そうするとオチのインパクトが薄れちゃうのでやめたという感じです。その点鋭く褒めていただいて嬉しいです🎵
    長文失礼しました。
  • これはこれで、作品としてはアリですね。
    まあ、年末年始というのもあり、ほっこりする話の方が向いているとは思いますが。

    いや、「卵」のお題でほっこり感ゼロの話を書いた私が言うことではありませんね(笑)。失礼しました。
  • 志草様、コメントありがとうございます!
    いつも魅力溢れるレビューをお寄せいただき感謝の念に堪えません!

    志草様的にはこれはこれでアリですか。多種多様なご意見をいただいてありがたい限りです!
    たしかに年末にこんな縁起悪い話を書くのもどうかという話ですね(笑)。仰る通りだと思います。
    『ねーうしとららん』、設定からしてめちゃくちゃ面白そうで、楽しみに読ませていただきます。カクとヨムを両立できない不器用者で申し訳ないです。
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