本作は、女子高校生が(ロックを中心とした)古いレコードを聴くという設定です。
男子高校生でも良かったのですが、女子高校生がザ・バンドとかスワンプのレコードを偏愛して、「USオリジナルが~」とか「マト番が~」とかいう話をしていたほうが面白そうなので、女子高校生たちを登場させました。
リアルにはそんな人たちはいない、もしくは、いたとしても極稀だと思いますが、そういう人たちがいたら面白いなという、一種のファンタジーです。
ただ、現実問題として、高校生がレコード屋に通ってレコードを買えるのかという疑問が生じます。
そこで、本作では、高額なレア盤や名盤のオリジナル盤は、なるべく購入対象としては登場させないようにしています。代わりに、そこそこ安く買えて満足度の高いレコードを中心に扱っています。
ザ・バンドを多く扱っているのも、少し前まではオリジナル盤がそこそこ安く買えたからなのですが、最近はだいぶ高くなってきたなあという印象があります。
また、ディランのオリジナル盤が秘蔵されていた視聴覚資料室や、昔安く買ったシティ・ポップのコレクションがある吉見さんのお父さんのレコード棚などを登場させて、女子高校生たちがそれらのレコードを体験できるという設定も作ってあります。
中古レコードの値段は時価で、その時々によって変わりますし、同じレコードでも一枚ずつの状態、盤質などによっても変わります。そして、どのレコードをいくらに設定するのかということはレコード屋さんの「表現」の一つであるとも言えます。そのため、本作では、具体的に「何円」という表現は避けて、「財布の中にあるお金でも十分お釣りがもらえるくらい」のように、漠然とした表現にとどめています。