チャッピーにお題を出してもらいました。
【課題】
『傘』をテーマに
* コンビニ店員
のPOV(1人称)で物語を書け
【開始 2026.05.24 23:20】
フリーター21歳女子>20時上がり予定。今は19時半。外を見ると雨が降り出してる>帰りどうしよう。彼氏は残業>買って帰っても良いけど、結婚のために節約中>常連のおじさんがきた。「雨降ってきちゃったねぇ」>「もうすぐ上がりなのに傘持ってないし彼氏夜勤なんすよーだる〜」>じゃあ買ってあげるよ!>えーありがとう♡>家着く。背中から声>おじさんついてきてる>キャアアア
本編
「うわっまじかよ」
自動ドアの開閉と共に、鼻が雨の匂いを察知した。
(傘持ってきてないわ……。でも買いたくねぇ〜)
この前タクヤと話し合ったことを思い出す。「結婚式のために協力してお金を貯めよう。300万」ってタクヤが言った。
指輪はハリーウィンストンを諦めたけど、結婚式は地元の友達みんな呼んで、可愛いチャペルで挙げたい。お色直しはアナ雪のドレスとか着たいし。風船とか飛ばしたいし。
(デザートビュッフェとかもつけたいなぁ)
ティロリロリリーン
「いらっしゃいませぇー」
3年も店員をやってると、自動ドアのメロディが聴こえた瞬間、自動的に口が動く。
ついでにニッコリ笑顔をプレゼント。結婚式を想像すると気持ちが上がる。
目に飛び込んできたのは、アブラマシマシの禿げ頭。
(うわっ)
常連の、通称アブラムシだ。
「やぁーマイちゃん! まいったよぉ〜雨に降られちゃってさぁ」
「ねぇ〜! 困りますよー! あたしも傘なくてぇ」
仕方ないから相手をしてやる。
あたしがアブラムシの相手をしてる間は、商品の補充とかを、他の子が積極的にやりだすのがお決まりになってる。話が長いし。
でっかい声で話を続けながら、アブラムシは油っぽい手で、缶チューハイとビニール傘を持ってくる。
「マイちゃんも傘ないのぉ? 相合傘しちゃおうか? なんちって」
「ちょっとヤラシーんですけど! キモすぎ〜」
いつものセッタのボックスも付けて、ハイお会計。
「パイパイ、じゃなくてペイペイで!」
「ちょっとセクハラやめて〜」
口角は上向きキープ。キモいけど触ってくるわけじゃないし。
「でもね、確か22時には止むみたいだよ。彼氏と相合傘出来なくて残念?」
ニタニタって擬音が書いてあるみたいな顔。てかタクヤが迎えにくるなら傘2本持ってくるだろ。
「あたし、もうすぐ上がりだから降られちゃいますよぉ。彼氏も仕事だから、あたしもあとで傘買おうかな」
勿体無いけどさ。流石に濡れて帰れる距離じゃないから。
「お、じゃあおじさんが買ってあげるよ」
「え?」
「はい、これもお会計お願いね」
60センチのビニール傘。
「えー♡ ありがと〜!」
手を掴んであげよう。大サービス。
「むほほ、いいってことよ」
きんも。でもマジありがたい。節約したかったし。
「じゃあね〜またきてね〜!」
黄色い声で送り出してあげる。アブラマシマシの後頭部。雨に濡れて、水と油。
神様。アブラムシは善行を積んだぞ。来世はきっと哺乳類だね。
20時ちょい過ぎ。
「お疲れ様で〜す」
交代で入ったオバハンに挨拶。
外に出ると、大雨。小学生の時のプールのシャワーみたいな勢い。地獄のシャワー、なんて。
(新品の傘って素晴らしい!)
バババババ
と雨と戦う、アブラムシマネーの傘。
60センチだからバッグも濡れない。気が利いてるじゃん。
タクヤは今日、製造現場の立ち会いだから帰りが遅いって言ってた。日付変わるかもって。
(雨は22時までだっけ)
タクヤは降られなくてすみそうだね。
帰ったら夜食でも作ろう。お風呂も済まして。タクヤが好きなジェラピケで待っててあげよう。
アパートが見えた。夜食のために、冷蔵庫の中身を考えながら。
それにしても、地獄のシャワーは流石の威力だった。バッグは無事だけど、足元は浸水の感触。
ドアの前につく。鍵はバッグの外ポケット。傘はドアの横に置いておこう。
「アブラムシ、マジ感謝だわ」
ガチャ
ドアを開けて、部屋に入る。
バッグを置いて、靴を脱いで、靴下も脱ぎたいけど濡れてて難しい。
上がりの床に座りたい。振り返って。
(あれ?)
そういえば、ドアが閉まる音が聞こえなかった。
顔をあげる。
ニタニタと笑う顔が、至近距離。
「アブラムシって、僕のことぉ?」
【了 0:35(所要1時間15分)】
いや、10分は無理では……(絶望)