掌編ホラー集『400字ホラーシリーズ』(
https://kakuyomu.jp/works/822139841011342479)の没エピソードをまた公開します。
あくまで「没」なので、お暇な方だけお読みください。
その22 職歴(没)
「本当に、あったはずなんです……」
彼はそう言って俯いた。
彼はある大手の会社で営業をしていて、仕事にも慣れてきた頃だった。
実家の母から、帰ってきてほしいとの連絡を受けた。父に癌が見つかり、せめて生きている間は傍に居てほしいとのことだった。
父は母がそう伝えたことを知ると最初は怒ったが、彼が仕事を辞めて帰ってきたことを知ると黙った。
「きっと父には、仕事を辞めるということはそれだけ大きなことだったのだと思います」
その後、地元で再就職先を探したが、奇妙なことが起こった。
履歴書に前の会社のことを書くと奇異の目で見られた。
本当にそんな会社があるのかと、はっきり聞かれたこともあったという。
彼は疑問に感じてネットで確認しようとしたが、公式サイトはもちろん、その会社名自体出てこなかった。
「でも、確かに給与が振り込まれた記録はあるし、働いていた記憶もあるんです」
架空でも、妄想でもないんです――彼は語気を強めた。
以上です。没にした理由としては「インパクトが足りない!」この一言ですね。不思議な話ではありますが、正直単調で面白味に欠けます。
ちなみにこの掌編集は、来年一月二日に完結予定です。中途半端な時期ですが、コンテストの文字数と更新ペースの関係でそうなりました。
よろしければ、来年も私の「悪ふざけ」にお付き合いください。
良いお年をお迎えください。