第2話「輸送」は、羆牢という制度が人間をどう扱うのかを、説明ではなく体感してもらうことを意識して作りました。
この話は、まず頭の中に映像がありました。
大勢の受刑者が巨大な檻に入れられ、その檻ごと運ばれていく。
人間を一人ずつ移送するのではなく、檻そのものを一つの荷物のように扱う。
その映像から、やりたいことを文章にしていきました。
同時に意識したのが、第1話から続いている藤黒と山城の過去です。
現在では羆牢へ向かって輸送されている。
過去では、二人が少しずつ特殊詐欺の世界へ入っていく。
輸送にかかる時間の中へ過去の話を入れることで、現在と過去を一緒に進める構成にしました。
また、『羆牢』では物語全体を通して、読んだときに感覚へ直接残るような描写を、ときどき強く置くことを意識しています。
第2話でいえば、檻の中での小便の場面もその一つです。
ヘリコプターで巨大な檻を吊り下げ、その中に人間が大勢入っていたら、どんな状況になるのか。
強烈な風を、ただ「風が強い」と書くだけでは面白くない。
どうやったらその風を読者に感じてもらえるだろうと考えた結果、出てきた答えが「小便をさせる」でした。
汚い場面ではあるのですが、自分の中ではかなり映像を意識して作った場面です。
そして第2話の最後で、とうとう羆牢の壁が姿を現します。
それまで名前だけだった「羆牢」が、初めて巨大な構造物として目の前に現れる。
第2話「輸送」は、受刑者たちを物理的に羆牢へ運ぶ話であると同時に、読者にも少しずつ羆牢の実体へ近づいてもらい、最後にその壁を見せる。
そんな構成で作りました。
