• 現代ドラマ

『羆牢』制作記録⑦ 第7話「現実」ができるまで

第7話では、三話続いた本宮編を終えて、久しぶりに藤黒たちのいる羆牢内部へ戻ります。

第1話から第3話まで藤黒、第4話から第6話まで本宮。

最初からこの二つの視点で進めるつもりでしたが、三話離れたあと、どうやって羆牢の中へ戻すかはかなり意識しました。

そして、ここまで一度も姿を見せていなかった熊。

森の中で突然遭遇させることも考えましたが、最終的にはヘリで檻ごと運ばれてくる形にしました。

藤黒たち自身がそうだったように、熊もまた外から羆牢へ運ばれてくる。

ここが「熊のいる山」ではなく、人間も熊も意図的に集められた国家の隔離区域であることを、最初の熊で見せたかったからです。

ただ、今回描きたかったのは熊との戦いよりも、「何もない場所で生きる」ということでした。

水があっても安全か分からない。魚を捕まえても火がない。森に食べ物があっても、何を食べていいのか分からない。

この三人には、サバイバルの知識も道具もありません。

そんな「何もない」を象徴するものとして書いたのが「火」でした。

そして、藤黒と山城の間に入った三人目が、大月深夜――マサタツです。

誰も誘っていないのに、いつの間にか一緒に歩き、二人で考えていたことを三人で考えている。そのくらいの距離から始めたかった人物です。

後半では、藤黒たちが羆牢へ来る前の世界も少し描いています。

十五億円で、売る気のなかった人間から店を買う。

それだけの金と交渉力を持っていた藤黒が、羆牢ではライター一本すら手に入れられない。

「失ったのは、金ではなかった。
 金を、欲しいものに変えられる世界だった。」

第7話で描きたかったことを、一番そのまま表している部分だと思います。

熊より怖いのは、それまで当たり前だった世界が何も通用しなくなることなのかもしれません。

次の第8話では、再び本宮たちの側へ戻ります。

ここからは羆牢の内側と外側を行き来しながら、少しずつ物語を進めていきます。

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