第6話では、本宮が羆牢の見学を申請している遺族・高畑真冬に会い、娘と江田島について話を聞きます。
今回、書くうえで意識したことの一つが、「自分が見てみたいけれど、実際には見たことのない世界を描く」ことでした。
羆牢の中はもちろん、これまでに登場した風俗業界もそうです。そして今回は、国会を書きました。
国会の中で参考人として話すという経験は、当然ながら自分にはありません。それでも、テレビ越しではなく、その場に座ったら何が見えて、何が聞こえて、どんな空気を感じるのか。できるだけ高畑と一緒に委員会室へ入ったように読んでもらえる場面にしたいと思いました。
委員会室の広さ、議員席、マイク、資料をめくる音、キーボードを打つ音。調べることも多く、今回かなり大変だった部分です。
でも、書いてみたかった世界でもあります。
もう一つ、第6話から新しいキャラクター、成瀬ひよりが登場します。
本宮瞳胡、吉沢香澄、成瀬ひより。
同じ新聞社で働く女性でも、見た目だけを変えるのではなく、考え方や人との距離感、恋愛観、会話のテンポまで違う三人にしたいと思って作っています。
三人が並んだときに、それぞれ別の方向を向いた人物に見えることを意識しました。
そして今回、和田翔太の一人称視点も入れました。
和田視点は一度だけの変化球ではなく、今後も使える『羆牢』の一つの型にしたいと思っています。同じ編集部でも、本宮から見えるものと和田から見えるものは違う。特に和田は、興味を持ったものを細かく調べていく人物なので、本宮とは違う角度から世界を広げられるキャラクターになればと思っています。
もう一つ、この作品で意識しているのが、世界観をすべて説明しないことです。
今回も、羆牢とは直接関係のないニュースが編集部のテレビから流れています。
日本政府がロシアに択捉島の返還を要求し、国後島への自衛隊配備を進めている。
この世界では何が起きているのか、ここでは説明しません。
ただ、注意して読むと、現実の日本とは少し違うところがあります。
『羆牢』は、現実とほとんど変わらない世界として書いています。
でも、まったく同じ世界ではありません。
物語の本筋とは関係なさそうなニュースや会話、地の文の中にも、少しずつその違いを置いています。気づかなくても物語を読むうえでは何も問題ありません。気づいた人だけ、「この世界、もしかして」と思ってもらえれば十分です。
第6話は、被害者、高畑、国会、成瀬、和田と、かなり多くのものを入れた回になりました。
そして第4話から続いた本宮側の三話も、ここで一度区切りです。
次回は再び、羆牢の中へ戻ります。
AI画像は左から本宮、和田、平尾、成瀬、吉沢です。
