企画主催者様の方から注意を受けてしまったので、企画趣旨説明とあとがきを急遽こちらの方に移動させていただきました。(内容は同じなので悪しからず)
【企画趣旨】
こちらの作品は、「〖魔女集会で会いましょう〗を再燃させたい!!」」という企画による小説です。
星森あんこさんから提示された下記の要項を守り、短編を描くという条件で書かせていただきました。
(企画内容より引用)
・4000文字以内の短編であること(1話完結)
・既存の短編ではなく、新作として書くこと
ジャンルは問いません!魔法が使えない魔女でも大丈夫!
⚠新作であること、もちろん魔女(男性でも可)が主人公として登場すること。
以上が条件になります!
【あとがき】
初めましての方は、はじめまして。
いつもの方は、こんにちは。
企画参加作品の恒例、あとがき言い訳&補足のコーナーです。
改めまして、素敵な企画を開催していただいた星森あんこさんへ最大限の感謝を。
はてさて、今回は『魔女』をテーマならなんでも良いという、すごく大きな枠組みの掌編課題でした。
魔法使いではなく、あえて魔女としているのって、ハリーなポッターや、キュアップララパだったり、マハリクマハリタだったりではなく、イーヒッヒッヒだったり、ねるねるねるねを混ぜるタイプの方だという印象です。
やはりテーマから受け取れる普遍的な印象は大事にしたいので、晴れやかではなく不気味な方、という解釈をしました。
ですが、だからと言ってローブのワシ鼻ばあさんが毒リンゴを運んでくるわけにもいかないので、月のアーカイブの如く、言葉の印象はそのままに多重な意味を持つ新しい作品を作ろうと考えました。
いかがだったでしょうか?笑
それでは解説を。
『カレンダリウムの魔女』における「魔女」の解釈は、三つの意味を持ちます(三つの意味持たせるの好きだな笑)
1. 表面上の解釈
記憶の売買ができるというファンタジー能力を持っているという意味
これに関しては説明不要ですね。
こんなことができるのはもう魔女か神か悪魔か天使か、異能力者の類です。
2.依頼人から見た印象
みなに恐れられている(=あだ名)という意味での魔女。
律子のような一般人から見れば、彼女は「記憶を消す」という人知を超えた恐ろしい技術(魔術)を持ち、その対価としてカレンダーを埋めている、得体の知れない存在です。だから「魔女」と呼ばれ、恐れられています。部屋や人物の雰囲気も独特で不気味ですもんね。きっと利用者じゃなくてもそう呼ぶでしょう。
ここまでは、読者の方々がすぐにでもわかる範囲内です。
3. 真の解釈(この物語の核心)
この物語の本当の「魔女」の解釈は、彼女が泣き崩れた瞬間に明かされます。
彼女は単なる「魔法使い」なのではなく、「怪物(モンスター)」としての「魔女」なんです。
彼女には、人間が人間であるために必要な「自分自身の記憶(人生)」がありません。彼女は「空白」そのものです。
彼女は、その「空っぽ」を満たしたいという、怪物の本能的な「渇望」によって動いています。
人間が捨てた「記憶(感情)」を買い取り、それを喰らう(=自分に上書きする)ことでしか、自分が生きている実感を得られません。
そして、その行為こそが彼女の「呪い」です。
彼女は「一人の人間になりたい」と願って他人の記憶を喰らうたびに、彼女の人生(カレンダー)は「他人の記憶の寄せ集め」で埋め尽くされていきます。
記憶を買えば買うほど、彼女は「自分」から遠ざかり、ただの「寄せ集めの怪物」になっていくのです。
この物語における「魔女」とは、
「人間になりたいと願いながら、人間の記憶を喰らう(=買い取る)ことでしか生きられず、その結果、永遠に人間になれない『呪い』そのものを生業(なりわい)とする存在」
なのです。
では、なぜ「魔女」でなければならないのか。
その必然性は、僕が作品を書く上で一番大事にしています。
これが「魔女」ではなく「記憶屋」、「人生本舗」みたいな不思議ミステリー会社でも成立してしまうとテーマから逸れてしまいますよね。
この物語の主人公は、歴史的に「魔女」と呼ばれた人々の、社会的な役割と一致するんです。
歴史的に「魔女」と呼ばれた人々(多くは女性)は、社会の「外側」にいました。
そして、社会の「内側」にいる人々が、公にできない「秘密」――例えば、望まぬ妊娠の処理、未知の病の苦しみ、他人への呪い――を、「魔女」の元に持ち込み、処理させていたという成り立ちがあります。
主人公も、全く同じです。
彼女は、律子のような「普通の人々」が、あまりの苦しみに耐えきれず、「なかったことにしたい」と願う、人生で最も暗く、最も重い『秘密』(=捨てたい記憶)を、一身に引き受けています。
彼女の工房は、単なる記憶の取引所ではありません。
あのカレンダーだらけの部屋は、この街の人々が捨てた、無数の『秘密』と『絶望』の巨大な保管庫(ゴミ捨て場)なんです。
人々は、魔女に秘密を処理させ、スッキリして「日常(=社会の内側)」に帰っていきます(律子がそうしたように)。
しかし、魔女は、その秘密(=記憶)を背負ったまま、永遠に「社会の外側」に取り残されます。
彼女が「空っぽ」であり、「自分の人生を持てない」という呪い。
それはまさに、「他人の秘密を背負う」という役割を与えられたがゆえに、「普通の人間」としての社会から追放された、「魔女」のあり方そのものと言えるでしょう。
つまり彼女が「魔女」と呼ばれる必然性は、彼女が使う「記憶売買」という魔術的な力だけにあるのではありません。
人々が「人間」として生きていくために捨てた、最も暗い『秘密(記憶)』を一身に背負い、その「ゴミ捨て場」となることを宿命づけられた、社会の『外側』にいる者。
それこそが、彼女が単なる「記憶屋」や「人生本舗」ではなく、『魔女』と呼ばれる、構造的な理由です。
伝わりましたか?笑
ちなみにですが、本作『カレンダリウムの魔女』というタイトルですが、あえて『カレンダーの魔女』としていません。
calendarium(カレンダリウム)はラテン語です。
そして、これこそが、僕たちが今使っている「カレンダー(calendar)」の語源になった言葉。
もともとのカレンダリウムは、
「会計簿」あるいは「借金台帳」
という意味なんです。
古代ローマでは、毎月の一日(カレンダエ)が、借金の利子を支払う日でした。その支払い日や貸し借りを記録しておく「帳簿」のことを カレンダリウムと呼んでいたんです。
つまり、『カレンダリウムの魔女』というタイトルには、
• 「暦(カレンダー)を埋めていく魔女」という表面的な意味
• 「他人の記憶(人生)を売り買いする『帳簿』をつける魔女」という、本質的な呪いの意味
この二重の意味が込められています。
「借金台帳」という元の意味が、この物語の「記憶の取引」という設定に、不気味なほどハマるんです。
なので、カレンダーではなくカレンダリウム。
残念、今回は三重にできませんでした笑
今回も長々と、本来本編に入れるべき情報を捕捉、言い訳させていただきました。
筆力が低く毎度申し訳ありません……。
今回は4000字だったために、取引はパッと終わらせましたが、もしシリーズにするならば、実際に主人公が過去に行って、24時間を実体験するという流れにしたいなぁとか考えています。
HOLICみたいにオムニバスで無限にやれそう。
今回も楽しかったです。
またしても詩的な暗い話を書いてしまいましたが、明るいポップないわゆるラノベ的なノリの娯楽作品もいつか書きたいです。
またこういう企画があれば参加させてください。
みなさん教えてください笑